2010年12月6日月曜日

コメ減反強化のなか 日本が大慌ての小麦買い付け それを変とも思わぬ飽食日本の末路は?

農業情報研究所>意見・論評>2010年12月6日(12月4日今日の話題から転載)

 収穫期を迎えた大雨でオーストラリア小麦の減収と品質低下(飼料としてしか使えない恐れ)が避けられない情勢となった。これと干天によるロシアや米国の冬小麦減収の予想が重なってシカゴやパリの小麦先物相場が急騰するなか(世界食料品価格が急騰 2008年食料危機時を超える恐れも)、日本が入札予定を前倒し、大急ぎで米加の小麦調達に走っている。政府は2日の輸入入札でこの2年間で最大の21万トンのアメリカ小麦を確保したあと、7日には19万トン余のアメリカ小麦とカナダ小麦の買い入れを計画している。

 Wheat Purchasing Accelerated in Japan After Tight Supplies Boost Prices,Bloomberg,12.3
 http://www.bloomberg.com/news/2010-12-03/wheat-purchasing-accelerated-in-japan-after-tight-supplies-boost-prices.html

 これで月平均40万トン(2009年12月〜2010年11月の入札結果では、 月平均でアメリカ小麦25万トン、カナダ小麦6.6万トン、オーストラリア小麦7.6万トンほどとなっている)の輸入小麦は確保できるだろうが、既に急上昇している 落札価格のさらなる上昇は避けられず、いずれ小麦製品の価格上昇に跳ね返るだろう。



 そんななか、国内でいくらでも調達できるコメは、米価維持を理由にさらに減産を促す。(農水省 2011年産米生産数量目標決定 需給が緩まないようにと、ついに800万トン割れ)TPPによる日本のコメ撲滅政策さえ唱導され始めた。日本の政府は世界食料市場の緊迫にいかなる危機感ももたず、何も知らされない飽食日本の国民は、食料はいつでも、どこからでも、いくらでも降ってくると思い込み、コメ消費を減らすばかりだ。自給率40%は大変と騒ぐ人も、 コメ消費拡大なくしては自給率引き上げはほとんど不可能であるとは、とんと知らされていない。麦や大豆の国内生産を増やせばいいじゃないかと容易に考えている人もいる。それが絶望的に困難であるとは知らされないままに。高温多湿に弱い麦は、温暖化の進行でコメよりもずっと生産が不安定になることも知らされていない。(例えば、十勝産小麦の収量、過去10年で最低 猛暑影響 1等比率も下落 北海道新聞 10.11.23)

 日本がFTAを結べば農業が壊滅的な打撃を受けると言われるオーストラリアでさえ、産業グループと科学専門家が最近、人口が3500万〜4000万に増え、気候変動が食料生産の足かせとなれば、この国も食料純輸入国に転落すると警告している。いまのままでは、土地劣化、人口増加、長期的気候変動、土地利用の競合、水の希少化、栄養とエネルギーの利用可能性が、いずれ国の食料安全保障を脅かすことになるという。

 Australia faces food insecurity: review ,The Australian,12.2
 http://www.theaustralian.com.au/news/health-science/australia-faces-food-insecurity-review/story-e6frg8y6-1225964201628

 気がついたときには、小麦を売ってくれる国がなくなっていた。国内にはコメを作ってくれる人もいなくなっていた。それが飽食日本の末路である。


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