2014年1月4日土曜日

【新年のあいさつ】2014年の正夢

田中正治

2013年7月、山形のある農家から聞いた話です。

彼が言うには、自分達の地域の自民党の人がこんな話を言ってまわっているという。

TPPが締結されれば、多分米1俵(60kg)7,000円で輸入されてくる。こうなれば米農家はやっていけないので、政府は1俵当たり5,000円の補助金を出す。そうすれば1俵12,000円になり、現在の価格と同じくらいだ。

でも、それでは農家の利益は出てこないので、農家規模を拡大し、1農家30haにしてほしい。減反はいずれなくなる。30haは1家族では耕作できないので、外国人研修生を5人ほど雇えば、政府は研修生の人件費を5年間ほど補助するとのこと。だから農家負担はない。これで経営合理化すればTPPに対応できるという話だった。
でも、考えてみれば、現在米農家の平均耕作面積は1haだから30haとは30倍。農家耕作者の平均年齢は67歳くらいになっているのに、67歳の人が30haに規模拡大するとでも思っているのだろうか。まさか自民党もそうは思っていないだろう。30ha耕作となれば農業機械はほとんど大型用に買い換えなければならない。その費用は少なくとも3,000万円くらいにはなるのではないか。そうなれば実質的にほとんどの農家は切り捨て、見殺しになるだろう。

まあ、元気な若手農家が、ひょっとしたらこの話に魅力を感じるかもしれない。3000万円の農業機械を新規購入して賭けに出るかもしれない。しかし、米1表の生産原価は18,000円や15,000円という試算が出ているのに、12,000円という原価割れでも挑戦する人はどれほどいるのだろうか。仮にいたとして、5年間の外国人研修生への援助期間が過ぎればどうなるのだろうか。一歩間違えば夜逃げ、首つりの世界が待っているのではないだろうか。

2013年農地中間管理機構(大規模農家や企業に貸し出す仲介機関)が成立したが、これの狙いは、大規模農家や企業農業への土地の使用権の拡大のようだ。これが進めば、一部大農家と企業農業が主流になり、立ち行かない農家は農業労働者として、雇われる関係になっていくのではないか。あるいは、農家はばかばかしくなって、自家飯米だけ作って、農業を辞めてしまうかもしれない。

今は未だ外国企業の農地利用権はないようだが、すでに土地の売買権は承認されているわけだから、いずれそのうち利用権や所有権承認もありうるかもしれない。

もっとも、外国企業で一番要注意のモンサント社は、土地の利用権や所有権からではなく、種子の支配からはじめるだろう。遺伝子組み換え種子を甘い言葉で農家にまず使わせ、種子の特許権によって、永年その種子を買い続けなければならないようにしていく。特許権で農家を縛っていく。遺伝子組み換え種子が全国的に使用されれば、花粉の拡散によって、非遺伝子組み換え圃場も汚染される。こんなことが北米、南米大陸で現実に起こってしまっていることなのだ。

ところで、遺伝子組み換え種子の使用は、日本の法律ではなんら規制されていない。ただ、“遺伝子組み換えってなんだかや~ね”“なんだか体に悪いんじゃないの?”という世論が唯一の歯止めで、それが辛くも遺伝子組み換え作物の一般圃場での栽培をストップさせているのだ。

もう10年以上前、農業試験場の職員から聴いた話だが、当時全国の多くの農業試験場では遺伝子組み換え作物の栽培実験を行っていたそうな。でも世論調査などで、遺伝子組み換えへの不信感がとても強く、従って流通関連企業も世論に敏感だったので、試験場は実験をやめたとのことだった。

そういうわけで、世論形成はとても大切だ。ネットワーク農縁は2014年は、従来以上に遺伝子組み換えNO!の声を大きくしなければならないと感じる。TPPの締結反対、TPPからの撤退を政府に要求したい。同時に生産者と消費者の顔の見えるネットワークを全国に無数に広げていくことで、TPPに対抗していきたい。

ネットワーク農縁は、1997年遺伝子組み換え大豆NO!の新庄大豆畑トラスト、2000年遺伝子組み換え稲NO!の新庄水田トラストを立ち上げ、2002年GMOフリーゾーン運動を多くの会員とともにネットワークしながら進めてきた。18年間、米の産消提携運動をしてきた私たちにとっても、TPPに反対し、有機農業と在来の種子を守るための時代の節目に立っているという実感がある。

新庄水田トラスト
http://www.nurs.or.jp/~suiden/  

ネットワーク農縁
http://www004.upp.so-net.ne.jp/net-nouen/index.html

新庄大豆畑トラスト
http://daizubataketrust.sakura.ne.jp/  

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