阿部文子
12cmほどの丸々とした黒い塊が、“与三”と“大五”のエサ場にいる。人の気配がするとさっと消える。“何だろう?”と思っているうちに居座って“与三”と“大五”のエサを食べている。
全身真っ黒。目を閉じるとその存在がわからなくなる。目はまん丸でひげも短い。名前をつけた。チビタン・ハナコ。
ある夜、猫が道路で争っている。ギャアギャア。どこの猫かなと思って見に行くと“与三”と“大五”ではないか。チビタン・ハナコが来てからの現象。チビタン・ハナコは“与三”に寄り添い、“大五“は一人ぼっちで寂しそうにしている。
チビタン・ハナコは、親にはぐれて我が家にまよいこんだ。“与三”と“大五”は館山の海岸に捨てられていて、縁あって家へ来た。かぼそい8cm位の体で、2匹でお互いの腹を吸い合っていた。牛乳でやっと命をつないでともに大きくなった。
それに比べ、チビタン・ハナコは“与三”と“大五”のエサを横取りし、そのうちに堂々と台所に入りこんでは、“ここは私の家だ”と言わんばかりに走り回っている。夜遊びも覚えた。
夜になっても帰ってこない。そのうちに、近所の猫まで庭に入り込んででは、ギャアギャアと鳴いている。
アブナイ!メス猫をめぐって争いが起こっている。早く避妊しないとアブナイ!やっと捕まえて囲いに入れ、いつもの獣医に連れて行った。一晩預かってもらい手術を受けることになる。別れ際、聞いたこともない泣き声で私達を呼ぶ。
翌日、朝迎えにいった。「ハナコは男の子でした」。「エーッ!」おどろいたのなんのって。てっきり女の子とばかり思い込んでいたのでした。
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