2010年10月6日水曜日

きれいな水で商品経済に染まるアフリカ自給農村 農業も一変、とアメリカ研究者

農業情報研究所(WAPIC)


ルワンダ農村での2週間のフィールド調査からに帰ったアメリカ・レンセラー工科大学准教授・Michael J. Mascarenhasが、自給的コミュニティーにもたらされる技術的改善の影響がいかに複雑で思いがけないものか思い知らされた、研究方法はよほど注意深いものでなければならない、とニューヨーク・タイムズ紙上で述懐している。

 Leaving the Land of a Thousand Hills,The New York Times,9.15
 http://scientistatwork.blogs.nytimes.com/2010/09/15/leaving-the-land-of-a-thousand-hills/?ref=science

その一つの例が、重力送りのきれいな水を蛇口から出すシステムの導入による水へのアクセスの改善だ。これは間違いなく歓迎されると思われ、開発援助団体、チャリティー団体もこの分野で活動している。事実、インタビューした多くの家庭が、その導入以来、前より暮らしやすくなったと言っている。

 ところが、改善されたシステムから水を受け取るために、彼らは料金を支払うための金を用意しなければならない。水に対する支払が水へのアクセスの重大な障害となっている。蛇口の数が少ないから、その水を受け取るためには多くの家庭ははるか遠くまで足を運ばなければならない。となると、多くの家庭は近くの汚れた水の方を選ぶことになるだろう。多くの家庭は貧しく、ジェリカン(5ガロン=約20リットルが入る缶)一つ分に払う10ルワンダフランを稼ぐのも大変だ。

 システムの導入は、多くの家庭の農業のやり方も変えた。水を買う金を稼ぐために、今まで家族を養ってきたキャッサバ、豆類、トウモロコシなどの食料作物の代わりに、コーヒーなどの換金作物を作るようになった。これによって自給的農民の生活は不安定なものになった。世界市場でコーヒー価格が下がれば、彼らの購買力が落ち、水が購入できなくなるばかりか、彼らの経済的福祉水準も全体として下がる。それでコーヒー生産を増やせば、コーヒー価格がさらに下がることになる。

 今や灌漑のための費用もかかるから、多く家庭は、灌漑が必要なトマト、ペパー、タマネギ、パッションフルーツ、トマトの木のような、家族を養うだけでなく、余れば地方の市場で売ってきた果物や野菜を作るのもやめた。

 最後に、すべての家庭は、このシステムの最近の民営化で、水質や水量は全然改善されないのに、ジェリカン一つの水の値段が5ルワンダドルに跳ね上がったと文句を言っている。一部の村人は、飲み水に金を支払うために初めて借金をかかえることになった。

 南の国の公正で持続可能な開発、言うは易いがとんでもなく複雑で、難しい課題だと思い知らされる。


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