あべふみこ
僕はクロ。黒柴の雑種で雄。目の上に茶色のまあるい毛の部分があり、それが目のようで”四つ目”と呼ばれている。
本当の目はまん丸で、真っ黒の体毛の中に沈み込んでいる。
僕の大好きは散歩。
鎖につながれてご主人と小便をしながら歩く・・・そんな散歩を僕は拒否している。
どこまでも続く棚田。ここ鴨川の大山地区は段々棚田のオンパレード。
山の斜面を切り開いて耕した幾重にも重なる棚田。山を背負って、暖かい陽だまりの中腹に、人は住居を構えている。
そういう地形が僕のグランド。藪あり、道あり、田んぼあり、閉められた空家、その角に苔の生えたお墓、こうした空間を駆ける。
林の中にも走りこむ。畑の中にも走りこむ。気持ちいい、爽快。鼻はぬれ光り、目は輝き、全身が喜びで一杯。
僕は犬に生まれてよかった!
”クロ帰るよ”。帰るという言葉はクロが理解している数少ない言葉の一つである。
クロという名前が、自分のことなんだと、一番に理解した言葉で、”散歩”という言葉も大好きのようである。
朝早くと、夕方5時ごろになると散歩を催促する。おなかがすいているとたべものをほしがるが、満腹すると、もうほしがらない。
25cmほどの小さなクロが、我が家に来てから10年がたった。立派に成人し、庭先で番犬の役割を勤めている。
私たちを散歩に連れ出し、一日のメリハリをつけざるを得ないようにしてくれる。動物と人間の関係は、やはり家族なのであろう。
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