新庄水田トラスト世話人:あべ文子
大山千枚田への本道から約200m下のわき道を登っていくと、
丘の上にしゃれたそそとした建物“うつわカフェ草”がある。景色は抜群。
“うつわカフェ草”を温かく迎えるように、棚田が深くえぐれて周りを取り囲む。その中に人の家がポツポツ。
赤い鳥居がせり登ったはるか向こうの中腹にある。空に向かうと山々が連なり、時には、富士山も見えるそうな。
その一帯がクロの散歩エリアである。時たま散歩の人や車とゆきすぎる。日当たりはよく、林や田んぼもある。
小さな棚田の入り口でクロの鎖を解いて車から降ろす。車が走り出すとクロは後ろからついてくる。絶えずバックミラーで確認しながら進む。
オヤ!いないぞ!ア、いたいた!はるか後方の草むらでおしっこをしている。終わると全速力で追いついてくる。
途中で私も車を降り、坂道を歩く。“うつわカフェ草”の近くを通って目的地に着くと、すでに田中は坂道をランニングしている。スワイショー、八段錦などで体をほぐす。
その間クロは,全身から命の輝きを発揮させながら走ってくる。100m先の民家の方へ畦を疾走していく。尻尾がたなびいている。
視界から消えたかと思うと出てくる。近くの牛を飼っているところまで行ったらしい。坂道を駆け上って来ては、空き家の庭先で消える。
こけむしたお墓の並んでいる前を横切っては堆肥場へ行き、堆肥の中を掘って掘って堆肥を飛ばしている。ア~、やめてほしいな~。体全体、堆肥でくさくなるよ~。
“クロ帰るよ~”。“帰る”という言葉はクロが理解している数少ない言葉の一つである。
「クロ」・・・これは自分のことなんだと最初に理解した言葉で、必ず反応する。そのほか理解している言葉は“散歩”、“まっすぐ”、”ダメ“、”待て“・・・。
嫌いなものは雷のゴロゴロ、鐘の音,暴走するオートバイ。居場所を求めてウロウロ、机の下や、薄暗い部屋にいこうとする。
クロがほえる時は、必ず理由がある。通常自分のエリアに人や動物が入ってくると激しくほえる。ただし、かつて一度でも食事をもらった事のある人はしっかり覚えていて、飛びついて喜ぶ。実に繊細で高度な臭いに対するセンサーを持っているとしか思えない。
ご飯は朝夕2回。原則として玄米・野菜・煮干魚。おなかがすくと、独特のほえ方で要求する。満腹すると、私達が食べていてももうほしがらない。
散歩は原則として朝夕2回。そろそろ散歩の時間になるとそわそわする。ウンチやおしっこは散歩の時しかしない。自分も人間だと思っているふしがある、というより人とか犬ととかの区別が彼にはないのかもしれない。
自分の意思をしっかり通し、いやなことは断固として拒否する。ほんとうに可愛い。
彼がいることでどれだけ私達の生活が変化にとんだ、しっとりしたものになっているかわからない。感謝しているよ、クロ!

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