2009年11月28日土曜日

GM技術は世界を飢餓から救えるか? ニューヨーク・タイムズの問いに世界の6人の識者が答える


農業情報研究所(WAPIC)
09.10.29


「途上国で食料価格が高止まりするなか、国連は世界の飢餓人口が2009年に1億人増加、10億人を突破すると推定している。11月に予定されているローマの世界リーダーサミットは飢餓を減らし、貧しい国における農業投資を増やす方法を議題に据えた。

 次の緑の革命は何が駆るのか。遺伝子組み換え(GM)食品が世界の飢餓への答えなのか。食料生産に違いをもたらす他の要因があるのか。」


ニューヨーク・タイム紙が、世界の6人の識者にこう問いかけた。これに対する6人の回答が、6日付の同紙に一挙に掲載されている。

 >> Can Biotech Food Cure World Hunger?,The New York Times,10.26


 それぞれの答えを簡単に要約してみよう。


Paul Collier:オックスフォード大学経済学教授・アフリカ経済研究センターディレクター

 GM作物・食品に関する論争は政治的・美学的偏見で汚されている。気候変動はGM採用を不可避にする。特にアフリカでは、変化する気候と人口増加に対処するために、作物の適応を加速し、収量を増やさねばならない。GMは、作物の適応を早めるとともに、化学的というよりも生物学的な収量増加へのアプローチである。GM拒否は、困難な問題を一層困難にする。




Vandana Shiva:インドにおける50万の種子保存者と有機農業者の運動・ナブダーニャの創始者

 GM技術は未だ収量を大きく増やしていない。気候変動への対応は重要だが、気候変動に耐える作物の形質を作るのにGMは必要ない。農民は、何世紀もの間、これら作物を進化させてきた。生産を増やし・資源を保全するエコロジカルなアプローチを、小農民と共同して作り出さねばならない。




Per Pinstrup-Andersen:コーネル大学教授、2001年世界食料賞受賞者

 途上国農民が自然資源を損傷することなく食料を増産するのを助けるのは、現存する貧困・飢餓・栄養不良を減らし、将来の世代が妥当な価格で食料を入手できるように保証するために必要な行動の不可欠な要素をなす。このためには、GM技術も含む科学が中心的な役割を演じなければならない。ただし、新技術は、商業的利用の前にテストされねばならない。とはいえ、それを利用しないことの健康リスクとの比較考量も必要だ。




Raj Patel:食料・開発政策研究所

 米国はGM農業で世界をリードしているが、アメリカ人の8人に1人が飢餓状態にある。去年は大豊作だったが、一日1900キロカロリー以下しか摂れない人が10億人もいる。今日の飢餓の原因は食料不足ではなく、貧困だ。世界の400人以上の専門家が3年以上をかけて作り上げた最近の報告・ “Agriculture at a Crossroads.” で、科学者たちは、GM作物は世界を養うという約束を実現するのに失敗したと結論した。この研究は、世界を養うには政治的変化と技術的変化の両方が必要だと示唆している。明日の農業は、もっと地域的にコントロールされ、地方的に適応する必要があり、気候変動と資源の希少性の難題に挑戦する多様なアプローチ―水の使用量が少なく、大量の炭素を貯留し、外部からの投入(石油)を必要としない、農業生態学的アプローチが必要だ。




Jonathan Foley:ミネソタ大学の新たな環境研究所ディレクター

 現在広くプロモートされている農業の二つのパラダイムがある。ローカルで有機的なシステムとグローバル化され、工業化された農業だ。これらのどちらも、それだけでは、環境影響を減らし、食料安全保障を改善するという我々の必要を満たせない。両者からアイデアを取り、生産を増やし、資源を保全し、もっと持続可能な農業を建設する新たなハイブリッドの解決策を創り出す必要がある。精密農業、ドリップ灌漑、土壌保全のための様々の農法など、多くの有望な方法がある。水と肥料の要求を減らす新たな作物品種の作出も必要だが、この場合、GM作物の利用は、慎重なパブリックレビューを経て、慎重に行うのが適切だ。




Michael J. Roberts:ノースカロライナ州立大学助教授

 新たなGM種子は収量増加を速め、気候変動の悪影響を相殺する可能性がある。今までのところ、GM作物は途上国における収量を上げてきたが、先進国では大した増加はなかった。収量は増えたとしても、自分の研究では、将来の基本的難題である極端な暑さへの耐性は増していない。緑の革命は驚異的市場からではなく、ノーマン・ボーローグのような人々が世界に広めた作物科学への公的投資から生まれる。ただし、作物科学研究への資金は減少の一途を辿っている。

2009年11月24日火曜日

ネットワーク農縁+新庄水田トラスト+新庄大豆畑トラスト 合同企画
2009年12月13日(日) 収穫・感謝祭のお知らせ

会員の皆様へ

・12/13の出会いを楽しみにしています。(今田多一)
・収穫の喜びを皆さんと分かちあえれば最高です。(星川公美)
・心豊かに食生活を。農業を一緒に考えてください。(吉野昭男)
・皆さんとお話しできることを、たのしみにしています。(佐藤恵一)
・ようやく収穫することが出来ました。東京で会いましょう。(星川吉和)
・今年も“おっとっと”に替わってうかがいます。ヨロシクネ!(遠藤信子)
・なんだか”同窓会”の趣です。楽しみにして、いそいそ、わくわく・・・と。(佐藤あい子)
・新庄の美味しいものをいっぱい食べてみなさんと一緒に楽しくしたい。よろしくネ。(髙橋保広)

ネットワーク農縁生産者より

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2009年11月23日月曜日

クリントン国務長官(発言) 飢餓との闘いでGMが決定的役割 食料増産を助ける米国の主要手段

農業情報研究所(WAPIC)
09.10.17


ヒラリー・クリントン米国務長官が10月16日、「2007年以来60回もの食糧暴動で世界の安全保障を脅かすようになった飢餓との闘いにおいて、バイオテクノロジーが”決定的役割”を果たす」と語った。世界食料デーに因むビルサック農務長官との電話会談で、改善された技術(遺伝子組み換え=GM技術のことだ)が、諸国の食料増産を助けるために米国が利用する主要な手段の一つになると話したそうである。

 2050年までに世界食料生産を70%増やさなければ、91億人に増加する世界人口を養えなくなる(FAO:2050: A third more mouths to feed,09.9.23)、年に830億ドルもの途上国農業への投資が必要になる(FAO:On horizon 2050 - billions needed for agriculture,09.10.8)、地球温暖化によって2050年までに栄養不足の子供が2500万人増加するのを防ぐには農業研究・灌漑システム・インフラなどに年70億ドルの投資が必要になる(IFPRI:Climate change: Impact on agriculture and costs of adaptation,09.10.1)など、彼女も引用する最近の国連機関等の発表を真に受け、これに悪乗りしたものだろう。

 >> Biotechnology Is Key to Fighting Hunger, Clinton Says (Update1),Bloomberg,10.16

 食料問題や作物バイオテクノロジーについて、彼女がどれほどの見識を持っているというのだろうか。

 というより、どんな技術を使ったとしても、また土地の制約(これ以上の農地開発は、砂漠化と温暖化を加速させるだけである)と予測される気候変動のなかで、さらにはバイオ燃料用作物・植物の大増産も目論まれるなかで、70%の食料増産などまったくあり得ない話であることは、特別の見識などなくても分かり切ったことである。バイオテクノロジーがそれを可能にすると米国の技術を売り込むのは、特定集団を経済的に利するだけだったブッシュ政府の”イデオロギー”を少しも脱していないことを意味する。

 将来の食料問題を解決するのは、基本的には食料生産ではない。生産だけを見れば、現在の生産だけでも、現在の倍の人口も養うことができる。ストックホルム国際水研究所(SIWI)・国際水管理研究所(IWMI)の研究によれば、食べられる作物の収穫量は1人1日当たり4,600キロカロリー、つまり必要量の倍以上になる。にもかかわらず、収穫後の損失で600キロカロリー、一部を家畜に与えることで(肉などで取り戻される分を差し引いて)1200キロカロリー、流通過程と家庭における損失・廃棄で800キロカロリーが失われ、利用できるのは2,200キロカロリーに半減してしまうという(食料・水問題の解決には食料損失・廃棄の削減が決定的に重要ー新研究,08.5.26)。問題が”生産以後”にあることは明らかだ。

 その上、肥満・肥満病に悩まねばならないほどのカロリー過剰摂取がある。米国における1人1日当たり供給カロリーは、実に3754キロカロリー(2003年、FAOSTAT)にもなる(もう、化け物とでもいうしかない)。クリントン氏、食料増産よりも、お膝元の過剰消費を改めることが食料問題解決の一助になると知るべきである。GM技術による増産支援など、まったく余計なお世話である。

 [こう書いたからといって、とりわけ食料・栄養不足が深刻な途上国小農民の農業生産を持続可能な形で改善する必要性を否定するものではない。ただし、大規模モノカルチャーを不可避にするGM農業は排除されなばならない]


2009年11月1日日曜日

米国、GMテンサイ(サトウダイコン)の商業栽培承認に違法裁定!【転載記事】

09年9月22日米国カリフォルニア北地区連邦地方裁判所は、米国農務省(USDA)によるモンサント社の除草剤耐性(ラウンドアップレディ)テンサイの商業栽培承認は違法との裁定を下した。USDAは2005年の栽培承認に先立ち、重大な影響はないから環境影響評価書(EIS)の必要はないとしていた。

裁判所はGMテンサイの花粉が非組み換えのテンサイや近縁種のフダンソウ、テーブルビートと交雑し拡散する恐れがあり、これらの栽培農家が経済的損失を蒙ることから、あり得る拡散の結果を評価すべきとし、環境影響評価書の提出が必要と述べた。なお、改善のための法的手段に関しては未決定で、そのための審理は10月30日に開始される。

この裁定は、07年2月のGMアルファルファ違法裁定を踏襲したもので、GMアルファルファと同様にGMテンサイの商業栽培禁止へと発展する可能性がある。

GMアルファルファは、05年7月に米国農務省(USDA)はモンサント社の除草剤耐性GMアルファルファの商業栽培を承認したが、07年5月、カリフォルニア北地区連邦地方裁判所が、環境影響評価書が提出されるまで、全国的に禁止した。USDAは未だに環境影響評価書の提出を拒んでいるので栽培は禁止されたままである。

08年1月23日にUSDAのGMテンサイ商業栽培承認の差し止め提訴をした米国サンフランシスコのThe Center for Food Safety(CFS)、Organic Seed Alliance、Sierra Club、High Mowing Organic Seedsら、環境保護グループや有機栽培農家などの原告団は、GM作物栽培訴訟で連勝したことになる。これは米国において94年にフレーバーセーバー GMトマトが承認されて以来、既に商業化されたGM作物の栽培を差し止めた初の司法判断である。

日本はバイエルクロップサイエンス社とモンサント社のGMテンサイ3品種(いずれも除草剤耐性)を食用、飼料用に認可している。テンサイは、砂糖、ビートパルプ及び糖蜜に加工されたものが流通している。

ただ、砂糖用としてアメリカ産テンサイの輸入はないが、絞りかすを飼料用(ビートパルプ)として輸入している。糖蜜は、酵母、化学物質、医薬品の生産などに使用されている。今後GMテンサイの混入が避けられることを歓迎したい。

テンサイは他花受粉で、野生種、近縁種と交雑しやすく、風や昆虫によって運ばれる。裁判では、被告の科学者による交雑距離最高800メートルに対し、ひとつのレポートでは3200メートルの隔離距離で交雑は起こることや大気の状況によってはテンサイ花粉は24時間以内に、最高864,000メートル(864キロメートル)飛散し得ることが示された。GMテンサイの花粉汚染によって有機農家や非GM生産の農家が経済的損失を蒙ることは避けられない。

日本のGMイネなどの野外栽培実験指針に定められた交雑防止距離が、まさにこれと同等の問題を示している。

指針では、イネ30m、大豆10m、トウモロコシ600m(防風林がある場合は300m)、西洋ナタネ600m(周囲に1.5m巾の非組み換え西洋ナタネを作付けした場合は400m)。

これで交雑を完全に防止できるとはとうてい認められまい。上昇気流、強風、花粉源の広さ、気温、媒介生物、さまざまな要因を考慮すれば、野外栽培における交雑を完全防止できる距離を定めるのは困難だろう。

だからといって便宜的距離を定めるのは科学的真実から目を逸らし、災禍を先送りする無責任きわまりないものだ。GM栽培は汚染を避けられないとの認識にたてば野外栽培はしてはならないと判断するのがまっとうである。

モンサントのラウンドアップ(除草剤)耐性作物は、除草剤の恒常的な使用となり、ラウンドアップ耐性雑草の急速な出現を生んでしまった。現在、全米で、何百万エーカーも、スーパー雑草と呼ばれる除草剤耐性雑草によってコストと労力の大幅なアップで農家の収入減を引き起こしている。USDAデータの独立した分析(ベンブルック博士による)によると、組み換え作物が導入された1996年から2004年までの9年間で、米国では1億3800万ポンドの除草剤使用を増やしている。

これまで日本政府はGM作物栽培の開発、商品化を優先し、野外栽培実験を形ばかりの環境影響評価で強行し、交雑被害をうける農家や消費者の選択権をまったく考慮しないままで来た。政権交代による変革への期待として、環境汚染防止に真に有効な「栽培禁止」措置の実現を求めたい。(「いのちの講座」60号より)

【やすだせつこ.comより転載】
安田節子さんのご好意により転載させていただきました。