12月4日に開かれたEU環境相理事会(EUの決定機関の一つ)が、GMO導入がもたらす不安に応える新たな措置を採択した。それは、①遺伝子組み換え植物(GMP)の環境影響評価とモニタリングの強化、②GMOの環境放出と販売がもたらす社会・経済的な便益とリスクの評価、③リスク評価における加盟国の役割の強化、④非GM農業・有機農業と認められるためのGM種子混入率の設定という4つの措置
からなる。同時に、従来は禁止されていたGMフリーゾーンの設立も可能とした。
Council Conclusions on Genetically Modified Organisms (GMOs)
http://www.consilium.europa.eu/ueDocs/cms_Data/docs/pressData/en/envir/104509.pdf
EUにおけるGMOの許可と導入は、すべて欧州食品安全機関(EFSA)のリスク評価と、それに基づく欧州委員会の決定に拠ってきた。独自のリスク評価に基づく加盟国の禁止措置は、EFSAがこのようなリスク評価をことごとく否認することで、違法を宣告されてきた。このようなリスク評価と許可手続きのあり方は、EU政府たる欧州委員会と加盟国の対立を深刻にしてきた。また、常に対立し、決して解消されることのない評価者によるリスク評価結果の違いは、GMO食品・作物の安全性に対する市民・消費者の不安の解消を妨げてきた。リスクの“不確実性”は、そうした評価の食い違いを超えた現実の問題でもある。理事会決定は、このような問題に答えようとするものだ。
理事会は、GMO許可が依拠する専門的評価においては、決定のレベルによる食い違いを避けるために、加盟国評価機関がもっと積極的な役割を果たさねばならないと言う。多くの国は、人間の健康へのGMOの長期的影響はほとんど知られていないと、EFSAの意見だけに基づく許可を批判した。
閣僚は、さらに次ように要求した。
・栽培されるGMO、特に殺虫性GMOと除草剤耐性GMOの中長期的環境影響の評価。
・許可手続の枠内での社会経済的リスク・便益や農業の持続可能性の考慮。
・ユーザーにGM・通常・有機農業の自由な選択を保証するための種子へのGM種子混入率の境界の設定。
・生態系・環境に関して重要な地域の保護、生物多様性・農業方法に関して特別な価値を持つ地理的区域の考慮。許可手続において禁止を含む特別の管理・制限措置を課すことができる。自主的協定に基づくGMOフリーゾーンの設置も可能とする。
GMOのリス評価の分裂は、EUにおけるGMO政策の決定と実施を著しく不効率なものとしてきた。しかし、様々な意見を述べる評価機関の存在は、それらの意見が対等に扱われることになれば、評価の客観性の強化にもつながり得る。種子メーカーの提供するデータににのみ依存する米国や日本のお決まりの専門家による評価よりも、信頼性ははるかに高まる可能性がある。
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