2008年11月2日日曜日

遺伝子組換え作物の現状と問題点⑤

● 環境に与える影響

GM作物が環境に与える影響は多様である。害虫抵抗性(通称Bt)のトウモロコシは、殺虫遺伝子をもつが、その花粉が周辺に飛散し他の雑草に降りかかる。それを食草とする蝶の幼虫が巻き添えで死ぬことが分かり、種の多様性の問題をめぐる論争に発展した。


BT剤

この遺伝子が作る殺虫タンパク質は、植物の根から分泌され、土壌粒子に結合して1年間も土壌昆虫を殺す能力を持つことが分かっている。今最も深刻な問題は「遺伝子汚染」である。

カリフォルニア大学の研究者が、メキシコ山中の野生トウモロコシに組換え遺伝子を検出した。トウモロコシ原産国のメキシコは野生種を保護するために1998年から組換えトウモロコシの国内栽培を禁止している。


農水省はGM作物の国内栽培を認めてはいるが、近隣在来種との交配による遺伝子汚染や、有機農業への影響、風評被害などを恐れて実際には農家は国内栽培をしていない。北海道はGM作物の栽培に関し、独自の栽培規制条例を作り規制に乗り出している。国土の狭い日本では、一度GM作物が栽培されれば、在来種の汚染は避けられない。

広大なアメリカでもすでに、非汚染作物の入手は困難な状況である。1昨年8月、イタリアではアメリカから輸入した非組み換えトウモロコシの種子がGMで汚染されていることが播種後発覚し、州知事の命令で400ヘクタールのトウモロコシが廃棄される騒ぎが起こっている。厳しい対策を講じなければアメリカを基点とし、遺伝子汚染は今後も世界に広がるだろう。

● 国内の遺伝子汚染・・・GMナタネの自生と拡散

2004年夏、茨城県鹿島港周辺で遺伝子組換えナタネの自生があることが農水省によって発表された。

我々はすぐに各地の市民団体の協力を得て国内の他のナタネ輸入港周辺を調査し、岡山県水島港を除く、千葉港、鹿島港、横浜港、清水港、名古屋港、四日市港、神戸港、博多港でのGMナタネの自生を確認した。千葉港や鹿島港、四日市港では港内から外に自生が広がり、国内産ナタネや野生のカラシナなど野生種や栽培ナタネ科植物への交配による組換え遺伝子の拡散が懸念されている。


GMナタネ自生

四日市から南に約40Km先の製油工場までの国道23号線の沿線には、本来なら存在しない西洋菜種が多数自生しており、現在その80~90%は除草剤耐性である。これらの遺伝子組換えナタネは本来1年草だが、ここでは多年草化して越冬し、田圃の畦や道路端で世代交代している事実が確認された。

これを放置すれば商業栽培ではなく、意図しないGM作物の自生によって遺伝子汚染が広がる危険性がある。これは今後除草剤耐性や害虫抵抗性だけでなく、薬用GM作物の開発と輸入の進展次第では深刻な問題を起こすだろう。

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