農業情報研究所(WAPIC)より転載
08.6.20
先般、燃料価格高騰でタイ農村に水牛耕が復活しつつあると伝えたが(タイ 燃料価格高騰で水牛耕が復活)、フィリピンでもトラクタからカラバオ(水牛の亜種)に戻る動きが広がっている。統合地域情報ネットワーク(IRIN)が伝えるところによると、これは原油価格高騰がもたらしたやむをえない伝統回帰である。作業の能率は落ち、カラバオも決して安くはなく、場所によっては見つけ出すのも難しい。
それでもトラクタを使うよりはずっと安上がり、浮いた金を肥料や農薬に回すことで収量も増える、サトウキビ農園のような大規模農場はともかく、小農民には適し、しかも持続可能なやり方だという。
PHILIPPINES: Farmers go low-tech as fuel prices
soar,IRIN,6.19
http://www.irinnews.org/Report.aspx?ReportId=78810
南部ルソン・ラグナ州で19歳の息子と一緒に米を作る60歳のサン・アントニオは、3㌶の田んぼを耕すためにトラクタを借りると、一期に5万ペソ(1136米ドル)かかるが、カラバオに頼れば3万ペソで済むと計算した。こうして6月7日、彼らは近くの町で9歳のカラバオを購入した。二期作ではこれを使って耕す。
サン・アントニオと同様、全国の多くの農民が、燃料価格の高騰でカラバオに戻ることを余儀なくされている。フィリピン・カラバオ・センター(PCC)のクルス常務は、「ひとつのトレンドがあり、これは原油価格の高騰と非常に強く関連している」と言う。
フィリピンの米倉である中部ルソンでも同様な動きが広がっている。ただ、ラグナに比べての問題は、カラバオを見つけ出すのがもっと難しいことだ。中部ルソンの農民の90%はトラクタに依存、何年も前にカラバオを売ってしまった。簡単にはいかないが、もしカラバオが使えれば、昔に戻ろうとしているという。
アントニオの今年第一期作の収穫は、借りたトラクタを動かすために大金を取られ、十分な肥料と殺虫剤を使えなかったために散々だった。いつもは300袋を収穫するのに、100袋しか穫れなかった。彼の息子は、第二期作ではそういう問題はないと確信している。ディーゼルに払った金を肥料と農薬に使うことができるからだ。
クルス常務の話では、カラバオでは耕す時間が余計にかかるが、生産性が落ちるわけではない。「わが国農民が耕す土地の面積は小さい。カラバオを使うのに非常に向いている。サトウキビ農園のように大規模なら話は別だが」。「小農場では、肥料や農薬に比べて、スピードは重要でない。生産性は投入・産出比だ」。トラクタの使用、従って非再生可能エネルギーの贅沢な使用をやめるのは”持続可能”でもある。持続可能な食料生産システムを持たねばならない。
とはいえ、カラバオは高価で、場所によって違うが2万5000ペソから4万ペソもする。サン・アントニオは2万5000ペソで買ったが、これも決して安くはない。しかし、カラバオは5年、10作は使える。トラクタと違い、カラバオを養う必要もない。沼地に放っておくことができる。息子は、11月の収穫でカラバオ購入費は全部払えると信じているという。
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