【転載】種子主権と地方自治 印鑰 智哉さんfacebookより
昨日の藤原辰史さんの講演は素晴らしかった。今後を切り拓く方向として藤原さんは自治を挙げる。それに共感する。生活・生産・政治が密接する小さな単位の自治こそが未来を切り拓く重要な要素であり、そうした小さな単位の自治の連帯(提携)こそがめざす方向だと思う。その中で国家は自ずと変容せざるをえないだろう。
ひるがえって10月26日から始まる臨時国会。政府は種苗法改正を強引に通す予定だ。この種苗法改正の問題、長々と書いてきたけれども、端的に言うならば、この改正は自治の破壊をもたらすことが最大の問題だといわざるをえない。
種子法廃止・農業競争力強化支援法・種苗法改正は一体のものであり、そのめざすところは地方自治体による公的種苗事業を弱体化させて、種苗を大企業の利益の最大化を実現することだ。人びとの食料主権を奪い、社会を多国籍企業に隷属させる大きな一歩となってしまいかねない。
なぜ、そうなるのか、見てみよう。種子法廃止の理由が種子法があると民間企業が活躍できないからだ、とされた。しかし、種子法廃止されても民間企業は活躍できない。なぜかというと、日本では米など主要産品は道府県が優秀な品種を開発し、安い金額で提供しており、これがある限り、民間企業は利益を上げることができないからだ。税金を投入して種苗を育成することは「適正な競争」に反するとして、排除され、民間企業と同じ条件で競争させる。だから自治体の種苗事業は税金ではなく、農家に買って支えさせなければならない(=すべての品種で自家増殖許諾制)。だから種苗法改正は種子法廃止とセットで、これなしには目的達成できない。
ターゲットとなるのは米をはじめとするその地方の主要農産物である。すでに野菜や花の種苗のほとんどは民間企業が握っている。最後に残るのが米などの主要農産物だが、それに今、手がかけられようとしているのだ。
競争に曝されれば地方自治体といえども、市場の小さな地域限定の種苗は作れなくなるだろう。地域の農業を支えてきたそうした多様な種苗が姿を消し、そうした地域での農業が放棄されていく。グローバルな品種の栽培に適した地域だけが残る。残った産地もグローバル品種の栽培は国際的な競争に曝され、生産者は常に低価格での生産を余儀なくされる。
地域での就農者の減少はさらに加速するため、地域の種苗企業、育種家・育苗家の方たちの経営はさらに追い詰められるだろう。唯一、このような状況の中で利を得るのは世界大で種苗を売ることができる大企業のみになるだろう。
新型コロナウイルス感染、気候変動の激化を受けて、今、グローバルな食の生産には暗雲が垂れ込めている。食料輸出国での食料輸出規制は今後、頻発になされることが予想される。米国ですら遺伝子組み換え大豆を国外のために生産するよりも、米国内で循環する地域農業の利点に関心が向かいつつある。
そんな時、日本政府はそんな現状は一切無視して、公的種苗事業の民営化、グローバリゼーション一筋に突っ走っている。米国ですら、日本のような極端な民営化方針は採られていない。主食は守られている。食料自給率がもっとも低い国がさらにそれを危うくする政策をとるというのは常軌を逸しているといわざるをえない。
タネがなくなった時、人びとは単純に飢えるしかなくなる。すでに野菜の種子の9割は海外生産に頼っている日本、もし、海外から種子を輸入できない事態に陥った時、果たしてどうなるのか? 日本にとっての最大の急務は種苗法改正ではなく、日本の各地域で種苗を生産できる体制を作り直す、そしてどうその産物を地域で生かしていく体制をどう再構築するかだろう。それは市場原理では作ることはできない。人びとの意志、政治がなければ生まれない。
その鍵を担うのが地方自治となる。グローバルな品種に頼るのではなく、可能な限り、地域の中、あるいは地域の近くで開発・生産された品種を育て、地域で消費する、食料生産と生産する人を守る、そしてそれを支える政策を住民が守る。地域でそのような動きを作ることが今後の日本の未来につながるだろう。
今後、地域でそうした動きを作るために何が必要かについての話を各地で話をしていく予定です。
10月24日 長野・子どもの食・農を守る会伊那谷主催のオンライン講演会
10月31日 下関「考えよう! 下関の食と農ー子どもたちの未来のために」
11月1日 北九州「たねと食のこれから」
11月3日 岐阜「食と種〜この美しい自然を次の世代へ受け継いで行くために」板倉の宿 種蔵
11月5日京都(団体内部)
11月7日名古屋「人と地球においしい食卓ー気候危機とコロナからの回復」
11月11日 埼玉・よしかわ市民ネットワーク
11月13日 広島(オンライン学習会)
11月14日 小山市「学校給食から考える食の安全・安心」
11月15日 京都
11月19日〜20日 愛媛県今治市
11月21日〜22日 山梨・Earthmanship全体を学ぶ学校
11月25日栃木 2020かみのかわ有機農業推進協議会「市民講座」
11月30日 生活クラブ愛知(オンライン)
12月2日 コープ自然派大阪(オンライン)
12月6,7日 北海道七飯町
12月8日 札幌
12月9日 帯広
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