━ No.624 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
有機農業ニュースクリップ
2014.06.24
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≪ 今日の目次 ≫
■米国はネオニコ禁止に動くか?
特別委員会を設置し180日の評価期限を切る
■掲載撤回されたセラリーニ論文 別の専門誌が再掲載
《 農薬 》
■米国はネオニコ禁止に動くか?
特別委員会を設置し180日の評価期限を切る
米国政府は20日、オバマ大統領の覚書を発表し、ミツバチなど花粉媒介生物(ポリネーター)の健康に関する特別委員会(Pollinator Health Task Force)を立ち上げ、180日以内に全米レベルの花粉媒介生物に関する戦略を策定するとしている。この中には、ネオニコチノイドの評価と、実行可能な花粉媒介生物の生息地確保の計画を立てるとしている。
覚書では、ミツバチなど花粉媒介生物による経済価値を年間150億ドルと見積もっている。2013年から2014年にかけてオオカバマダラが蝶の生息数が最低を記録し、ミツバチの減少が共用される現象レベル15%を大きく超える30%前後で推移している。こうした花粉媒介生物の減少が続けば、農業生産に大きな影響があり、食糧生産システムの持続性が確保できないとしている。この事態に、農務長官と環境保護長官を共同代表とし、国防長官やエネルギー長官など主要閣僚からなる特別委員会を立ち上げたもの。覚書では具体的な対策として、国有地や米軍基地内、道路脇に、花粉媒介生物の生息に必要な食草の植え付けなども列挙している。
ネオニコ系農薬の見直しを進めてきたEUは2013年4月、3種類のネオニコチノイド系農薬の一時的な使用禁止を15カ国の賛成で決定した。2013年12月からEU域内での使用を禁止し、2年以内にこれらの農薬の見直しを行うことになっている。この決定に先立ち、欧州食品安全機関(EFSA)は13年1月、ミツバチに対するネオニコチノイド系農薬の影響を認める報告書を公表している。
米国政府の立場は、EUがネオニコ系農薬の影響を認めモラトリアムに踏み切ったところまでは至っていない。覚書では、ミツバチなどの花粉媒介生物の減少は、遺伝的多様性の欠如や農薬への暴露、病害虫、生息地と食草の減少など複数のストレス要因による複合的なものとしている。この覚書により米国の農薬規制が大幅に変更される可能性はあるものの、180日の評価後にどのような方針が示されるか予断はできない。
・Presidential Memorandum, 2014-6-20
Creating a Federal Strategy to Promote the Health of
Honey Bees and Other Pollinators
http://www.whitehouse.gov/the- press-office/2014/06/20/presid ential-memorandum-creating- federal-strategy-promote- health-honey-b
・EU, 2013-4-29
"Bees & Pesticides: Commission goes ahead with plan
to better protect bees"
http://ec.europa.eu/food/anima l/liveanimals/bees/neonicotino ids_en.htm
・EFSA, 2013-1-16
"EFSA identifies risks to bees from neonicotinoids
http://www.efsa.europa.eu/en/p ress/news/130116.htm
・Bee Informed Partnership, 2013-5-2
Preliminary Results: Honey Bee Colony Losses
in the United States, Winter 2012-2013
http://beeinformed.org/wp-cont ent/uploads/2013/05/winter_ loss__2013-Fig-1.png
このオバマ覚書に対して食品安全センターは20日、花粉媒介生物の生息地の確保だけで、明確な農薬禁止に踏み込んでいないと批判するも、希望があるとの声明を発表した。食品安全センターは昨年来、ネオニコチノイド系農薬への規制強化を連邦政府に要求していた。
反農薬運動の国際的ネットワークのPAN-NA(国際農薬監視行動ネットワーク・北米)はまだ評価を明らかにしていない。
・Center for Food Safety, 2014-6-20
White House Offers Hope for Pollinators
http://www.centerforfoodsafety .org/press-releases/3248/ white-house-offers-hope-for- pollinators
●政策転換の気配もない農水省
米国政府が大統領覚書を発表した20日、農水省も昨年度のミツバチ被害の調査結果を公表した。この調査は、2013年度から3年の予定で、ミツバチ被害の調査を行うというもの。
20日に公表された昨年度の調査結果によれば、被害は7月から9月の水稲開花期に集中し、ネオニコ系などカメムシ防除用の農薬が考えられるとした。回収できた12例の死んだミツバチから検出された農薬9成分のうち6成分が水稲のカメムシ防除の殺虫剤成分で、高濃度のものもあったとしているが、報告被害のすべてが農薬が原因かは断定できないとも分析している。
対策としては、水田近くに巣箱を置かない、開花期に避難さる、散布の時間帯をずらすなどであり、EUなどのような一時にせよ使用中止はまったくないし、米国のような政策転換につながるような気配もない。
・農水省, 2014-6-20
蜜蜂被害事例調査の結果と今後の対策について
http://www.maff.go.jp/j/press/ syouan/nouyaku/pdf/140620-01.p df
蜜蜂被害事例調査中間取りまとめ(平成25年度報告分)
http://www.maff.go.jp/j/press/ syouan/nouyaku/pdf/140620-02.p df
【関連記事】
No.580 ネオニコ系農薬:欧米は規制の方向 日本は使用を推奨
http://organic-newsclip.info/l og/2013/13090580-1.html
No.616 韓国:ネオニコ系の使用を一時停止へ EUにならう
http://organic-newsclip.info/l og/2014/14030616-2.html
《 遺伝子組み換え 》
■掲載撤回されたセラリーニ論文 別の専門誌が再掲載
2013年11月に掲載を撤回されたセラリーニ博士(フランス・カーン大学)らの論文が24日、別の専門誌Environm ental Sciences Europe によって再掲載された。再掲載された論文は全文が公開されている。
この論文は、モンサントの除草剤ラウンドアップ耐性遺伝子組み換えコーン(NK603)を長期にわたって与えられたラットが、早い時期に死亡したり腫瘍が多発し、腫瘍も外から見てわかるような大きなものであったというもので、初の長期給餌試験であった。それまでモンサントなどのGM企業は、特許権を理由として、中立的な試験にまで餌となるGM作物の提供を拒んできた。セラリーニ博士らの研究は、こうしたGM企業の“妨害”に対して秘密裏に行われたもので、2012年9月、Food and Chemical
Toxicology誌に掲載された。
論文発表後、GM企業はもとより、EUを含む各国の規制機関までもが、研究結果を否定する見解を公表し、論文撤回を要求していた。FCT誌は当初、論文の掲載撤回要求を拒否していたが、2013年に元モンサントの研究者で、遺伝子組み換え推進団体とも関係あるとされるリチャード・E・グッドマンを、同誌の上級編集者に就任させ、大きな批判を浴びた。2013年11月、FCT誌はセラリーニ博士らの問題の論文を撤回した。
今回、Environmental Sciences Europe 誌が再掲載に至った経緯は明らかになっていない。しかし、GM企業や推進派、各国政府の規制機関の否定にもかかわらず、セラリーニ論文が十分な論拠と内容を持っていた、ということだろう。
・論文:Environmental Sciences Europe, 2014年6月
Republished study: long-term toxicity of a Roundup
herbicide and a Roundup-tolerant genetically modified maize
http://www.enveurope.com/conte nt/26/1/14
・Examiner, 2014-6-24
Se'ralini study on toxic effects of GMOs and
glyphosate republished
http://www.examiner.com/articl e/s-ralini-study-on-toxic- effects-of-gmos-and-glyphosate -republished
【関連記事】
No.545 GMコーンの長期給餌試験 早期死亡と多発する腫瘍
http://organic-newsclip.info/l og/2012/12090545-1.html
No.559 元モンサント研究者が専門誌の幹部編集者に就任
http://organic-newsclip.info/l og/2013/13050559-2.html
※この記事はウェブサイトに掲載を予定。
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■米国はネオニコ禁止に動くか?
特別委員会を設置し180日の評価期限を切る
■掲載撤回されたセラリーニ論文 別の専門誌が再掲載
《 農薬 》
■米国はネオニコ禁止に動くか?
特別委員会を設置し180日の評価期限を切る
米国政府は20日、オバマ大統領の覚書を発表し、ミツバチなど花粉媒介生物(ポリネーター)の健康に関する特別委員会(Pollinator Health Task Force)を立ち上げ、180日以内に全米レベルの花粉媒介生物に関する戦略を策定するとしている。この中には、ネオニコチノイドの評価と、実行可能な花粉媒介生物の生息地確保の計画を立てるとしている。
覚書では、ミツバチなど花粉媒介生物による経済価値を年間150億ドルと見積もっている。2013年から2014年にかけてオオカバマダラが蝶の生息数が最低を記録し、ミツバチの減少が共用される現象レベル15%を大きく超える30%前後で推移している。こうした花粉媒介生物の減少が続けば、農業生産に大きな影響があり、食糧生産システムの持続性が確保できないとしている。この事態に、農務長官と環境保護長官を共同代表とし、国防長官やエネルギー長官など主要閣僚からなる特別委員会を立ち上げたもの。覚書では具体的な対策として、国有地や米軍基地内、道路脇に、花粉媒介生物の生息に必要な食草の植え付けなども列挙している。
ネオニコ系農薬の見直しを進めてきたEUは2013年4月、3種類のネオニコチノイド系農薬の一時的な使用禁止を15カ国の賛成で決定した。2013年12月からEU域内での使用を禁止し、2年以内にこれらの農薬の見直しを行うことになっている。この決定に先立ち、欧州食品安全機関(EFSA)は13年1月、ミツバチに対するネオニコチノイド系農薬の影響を認める報告書を公表している。
米国政府の立場は、EUがネオニコ系農薬の影響を認めモラトリアムに踏み切ったところまでは至っていない。覚書では、ミツバチなどの花粉媒介生物の減少は、遺伝的多様性の欠如や農薬への暴露、病害虫、生息地と食草の減少など複数のストレス要因による複合的なものとしている。この覚書により米国の農薬規制が大幅に変更される可能性はあるものの、180日の評価後にどのような方針が示されるか予断はできない。
・Presidential Memorandum, 2014-6-20
Creating a Federal Strategy to Promote the Health of
Honey Bees and Other Pollinators
http://www.whitehouse.gov/the-
・EU, 2013-4-29
"Bees & Pesticides: Commission goes ahead with plan
to better protect bees"
http://ec.europa.eu/food/anima
・EFSA, 2013-1-16
"EFSA identifies risks to bees from neonicotinoids
http://www.efsa.europa.eu/en/p
・Bee Informed Partnership, 2013-5-2
Preliminary Results: Honey Bee Colony Losses
in the United States, Winter 2012-2013
http://beeinformed.org/wp-cont
このオバマ覚書に対して食品安全センターは20日、花粉媒介生物の生息地の確保だけで、明確な農薬禁止に踏み込んでいないと批判するも、希望があるとの声明を発表した。食品安全センターは昨年来、ネオニコチノイド系農薬への規制強化を連邦政府に要求していた。
反農薬運動の国際的ネットワークのPAN-NA(国際農薬監視行動ネットワーク・北米)はまだ評価を明らかにしていない。
・Center for Food Safety, 2014-6-20
White House Offers Hope for Pollinators
http://www.centerforfoodsafety
●政策転換の気配もない農水省
米国政府が大統領覚書を発表した20日、農水省も昨年度のミツバチ被害の調査結果を公表した。この調査は、2013年度から3年の予定で、ミツバチ被害の調査を行うというもの。
20日に公表された昨年度の調査結果によれば、被害は7月から9月の水稲開花期に集中し、ネオニコ系などカメムシ防除用の農薬が考えられるとした。回収できた12例の死んだミツバチから検出された農薬9成分のうち6成分が水稲のカメムシ防除の殺虫剤成分で、高濃度のものもあったとしているが、報告被害のすべてが農薬が原因かは断定できないとも分析している。
対策としては、水田近くに巣箱を置かない、開花期に避難さる、散布の時間帯をずらすなどであり、EUなどのような一時にせよ使用中止はまったくないし、米国のような政策転換につながるような気配もない。
・農水省, 2014-6-20
蜜蜂被害事例調査の結果と今後の対策について
http://www.maff.go.jp/j/press/
蜜蜂被害事例調査中間取りまとめ(平成25年度報告分)
http://www.maff.go.jp/j/press/
【関連記事】
No.580 ネオニコ系農薬:欧米は規制の方向 日本は使用を推奨
http://organic-newsclip.info/l
No.616 韓国:ネオニコ系の使用を一時停止へ EUにならう
http://organic-newsclip.info/l
《 遺伝子組み換え 》
■掲載撤回されたセラリーニ論文 別の専門誌が再掲載
2013年11月に掲載を撤回されたセラリーニ博士(フランス・カーン大学)らの論文が24日、別の専門誌Environm
この論文は、モンサントの除草剤ラウンドアップ耐性遺伝子組み換えコーン(NK603)を長期にわたって与えられたラットが、早い時期に死亡したり腫瘍が多発し、腫瘍も外から見てわかるような大きなものであったというもので、初の長期給餌試験であった。それまでモンサントなどのGM企業は、特許権を理由として、中立的な試験にまで餌となるGM作物の提供を拒んできた。セラリーニ博士らの研究は、こうしたGM企業の“妨害”に対して秘密裏に行われたもので、2012年9月、Food and Chemical
Toxicology誌に掲載された。
論文発表後、GM企業はもとより、EUを含む各国の規制機関までもが、研究結果を否定する見解を公表し、論文撤回を要求していた。FCT誌は当初、論文の掲載撤回要求を拒否していたが、2013年に元モンサントの研究者で、遺伝子組み換え推進団体とも関係あるとされるリチャード・E・グッドマンを、同誌の上級編集者に就任させ、大きな批判を浴びた。2013年11月、FCT誌はセラリーニ博士らの問題の論文を撤回した。
今回、Environmental Sciences Europe 誌が再掲載に至った経緯は明らかになっていない。しかし、GM企業や推進派、各国政府の規制機関の否定にもかかわらず、セラリーニ論文が十分な論拠と内容を持っていた、ということだろう。
・論文:Environmental Sciences Europe, 2014年6月
Republished study: long-term toxicity of a Roundup
herbicide and a Roundup-tolerant genetically modified maize
http://www.enveurope.com/conte
・Examiner, 2014-6-24
Se'ralini study on toxic effects of GMOs and
glyphosate republished
http://www.examiner.com/articl
【関連記事】
No.545 GMコーンの長期給餌試験 早期死亡と多発する腫瘍
http://organic-newsclip.info/l
No.559 元モンサント研究者が専門誌の幹部編集者に就任
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※この記事はウェブサイトに掲載を予定。
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