2014年6月27日金曜日

【遺伝子組み換え】EU諸国やロシア、中国の“GM離れ”が顕著

転載
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 有機農業ニュースクリップ

                 2014.06.27
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≪ 今日の目次 ≫
 ■遺伝子組み換え作物はどうなっている(1)


■遺伝子組み換え作物はどうなっている(1)

  遺伝子組み換え作物の“伝道師”国際アグリバイオ事業団
 (ISAAA)は、毎年世界のGM作物栽培の状況を公表している。今年2月に公表された2013年版ではGM作物の栽培面積は1億7千5百万ヘクタールに達し、途上国での栽培面積が先進国を上回ったとしている。言い換えれば、米国やカナダなどの先進諸国でのGM栽培が頭打ちになったことを意味しているにすぎない。

  一方で、EU諸国やロシア、中国の“GM離れ”が顕著になってきている。中国は、未承認品種の混入を理由として米国産トウモロコシの輸入を停止し、解放軍はGM食品とGMダイズ由来の食用油を禁じた。ロシアは、WTO加盟条件であった2014年6月からのGM作物栽培認可を、さらに3年延長した。

  各国のGM作物・食品の状況を、規制強化の動きを軸にまとめてみた。

 ・遺伝子組み換え - 2014年 世界の商業栽培と規制の動き -
  PDF http://organic-newsclip.info/log/gmo/GM_2014-06.pdf
  写真  http://organic-newsclip.info/img/gmo/GM_2014-06_s.jpg


 ●中国:顕著な“GM食品離れ”
  中国は、GMワタなどのGM作物を420万ヘクタールで栽培する、世界第6位の“GM大国”である。しかしこの数年、急激に“GM離れ”の政策が顕著となってきた。

  中国は昨年秋、米国産トウモロコシに未承認のGMトウモロコシMIR162(シンジェンタ)が混入していたとして積戻し処分とした。それ以降今年の春までに、輸入禁止となった米国産トウモロコシは100万トンを超え、総額29億ドルに達すると見られている。中国農業部の公表資料では14年1月から3月の四半期、トウモロコシ、アルコール醸造滓(DDGS)ともに前年比を上回る量が輸入されている。DDGSは、前年比323%と異常な量が伸びとなっている。しかし、今年6月に入って中国の税関当局は、MIR162の混入リスクを理由として、米国からのDDGS輸入を停止した。

  中国政府はまた、GM開発予算を急減させている。2008年、中国はGM開発12カ年計画に260億元(4400億円)の資金投入を決め、2010年には20億元(340億円)を投入している。しかし、2013年には4億元(70億円)と8割も急減しているという。また、商業化への承認間近とされた中国開発の害虫抵抗性GMイネは、2011年に棚上げされた。

  今年2月、中国政府庁舎の食堂からGM食品が排除されていると報じられた。4月には、中国科学技術部(日本の旧科学技術庁に相当)の科学技術新聞に、GMダイズと残留農薬の健康への懸念から「ヒトの生命と安全に対して強い予防的措置をとらなければならない」とする解放軍中将による主張が掲載された。さらに中国解放軍は5月、GM食品の健康への懸念からすべてのGM食品とGMダイズ由来のダイズ油の供給を禁止した。

 ●台湾:表示規制を強化 5%を3%へ
  台湾ではGM食品表示が義務付けられており、許容レベルは、日本と同じ5%である。台湾衛生福利部は6月、官民の専門家会議の結論により、許容レベルを5%から3%に下げ、2016年1月から実施するとした。この許容レベルの変更について、同部は「表示を義務付けるのは安全性を考慮するものではなく、消費者の知る権利を保障し、消費者に選択の自由を与えるためのもの」としている。安全懸念が理由ではないとするものの、中国政府の動きとも連動しているかのようにもみれる。

 ●キルギス:世界初? 全てのGMOを禁止
  中国に隣接する中央アジアのキルギスは6月、すべての遺伝子組み換え生物(GMO)の栽培、輸入、販売の禁止を決めた。議会を通過した法案は大統領の署名で成立する。

 ●フィリピン:ゴールデンライスは失敗か?
  フィリピンではGMトウモロコシの商業栽培が承認されており、80万ヘクタールで栽培されている。

  フィリピンでは、カロテンを強化したGMイネのゴールデンライスの商業栽培が問題になっている。昨年8月には、試験栽培圃場への直接行動により、収穫間近のゴールデンライスが引き抜かれ全滅した。開発している国際イネ研究所(IRRI)は、開発続行を明らかにした。BBCはこの直前、ゴールデンライスの「商業栽培申請間近」と報じていた。しかし、IRRIは今年5月、従来品種と比べてゴールデンライスの収量が低かったことを明らかにし、更なる「研究」が必要であると、暗に失敗を認めたかのような声明を発表している。フィリピンイネ研究所が公表している試験栽培地の情報によれば、いずれも10アール以下の小規模な試験しか行われていないようである。「商業化間近」と何年も繰り返してきたが、大規模試験栽培もできないような段階でしかないのではないか。

  IRRIなどによれば、フィリピンでの商業栽培の後、バングラデシュとインドネシアでも商業栽培が予定されている。ベトナムでも試験栽培されているとも言われている。

 ●バングラデシュ:Btナスの商業栽培に踏み切る
  バングラデシュは今年、新たに害虫抵抗性Btナスの商業栽培が始まり、29番目のGM作物の商業栽培国となった。このBtナスの商業栽培には、試験栽培の時から、農民も含めて多くの反対があったものの、押し切られた。

 ●イラン:Btイネの栽培を再開
  イランは2004年、害虫抵抗性のGMイネの商業栽培を行ったが、アフマディーネジャードが大統領に就任した後、中止された。2014年、イランは害虫抵抗性Btイネの試験栽培を再開した。

(以下、次号へ続く)

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