2010年3月7日日曜日

消費者はGM小麦にNO!

有機農業ニュースクリップ(2010.3.6)より転載

2010年2月10日、GM小麦の商業栽培に反対する日本、カナダ、米国、オーストラリアの4ヵ国の団体は、遺伝子組み換え小麦(GM小麦)の商業栽培に反する共同声明への賛同団体が26カ国、233団体に達した、と発表した。
米・加・豪3カ国の大手小麦生産者団体は2009年5月、GM小麦の商業栽培を求める共同声明を発表した。これに対し、米国、カナダ、オーストラリアの3カ国の生産者団体や消費者団体、環境団体など15団体が商業化反対の共同声明を公表し、賛同を募っていた。日本からは生協や有機農業関係団体など80団体が署名している。



・Press release, 2010-2-10
"GM Wheat rejected by 233 Consumer,
Farmer Groups in 26 Countries"
http://www.worc.org/userfiles/file/GM%20crops/GM_%20Wheat_PR_02_09_10.pdf

・プレスリリース(和文), 2010-2-10
「遺伝子組み換え小麦に対し
世界26ヵ国で233の消費者・生産者グループが拒否表明」
http://organic-newsclip.info/doc/20100210_press_release_GMwheat_statemant_ja.pdf

・署名団体リスト
http://www.worc.org/userfiles/file/GM%20crops/GM%20Wheat%20Rejection%20Signatures%20List%20Final%20Feb%209%202010.pdf

・共同声明, 2009-6-1
"Definitive Global Rejection of Genetically Engineered Wheat"
http://cban.ca/Resources/Topics/GE-Crops-and-Foods-Not-on-the-Market/Wheat/Definitive-Global-Rejection-of-Genetically-Engineered-Wheat


米国や日本で同時に発表されたプレスリリースは、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンのアンケートに答えた、日本の製粉業界団体によるGM小麦反対の立場を紹介している。製粉協会・門田正昭専務理事は、次のように明確に反対を表明している。

日本の消費者がGM農産物の人体に対する安全性および環境への影響に疑念をもっている現在の状況下では、GM小麦が含まれる、あるいは含まれているかどうかわからない小麦を原料とした小麦粉およびその製品は日本の市場では受け入れられないと考えている

また、モンサントの「勘違い」を指摘した全米家族農業同盟のデナ・ホフ氏の次の発言も紹介している。

アメリカの家族経営農家はモンサント社から小麦を守るためにあらゆることをやってきた。企業が種子も含め生命特許権をもつことは到底受け入れられない。
GM小麦は農産物や食糧供給を汚染し、有機農産物を破滅させる。
アメリカの農民はすでにGM小麦を拒否している。モンサント社は農家がいつかGM小麦を受け入れるかもしれないと思い違いをしている


この発表に先立つ2010年1月27日、米国中西部の農業生産者団体WORC(Western Organization of Resource Council)は、GM小麦の商業栽培が米国小麦産業に及ぼす影響についての分析レポートを公表した。このレポートでは、米国産小麦は約40%の価格低下を招くだろうと分析。GM小麦に慎重なEUや日本は、その供給をロシアなど旧ソ連諸国にシフトすることにより、米国のシェアと価格の低下を招くとしている。2009年シーズンの米国産小麦の世界シェァは、生産高で約10%、輸出では約20%を占めている。

・WORC, 2010-1-27
"A Review of the Potential Market Impacts of
Commercializing GM Wheat in the U.S."
http://www.worc.org/userfiles/file/GM%20crops/Review_%20of_Potential_Market_Impacts.pdf


モンサントは2004年、除草剤耐のGM小麦の商業栽培を断念した。商業化までにはまだ8年近くかかるといわれる現在の開発の狙いは、干ばつや塩分に耐性があったり、フザリウムや赤さび病などの菌類による病害に耐性のある品種とされている。レポートでも近年の品種改良の手法が、遺伝子組み換えを使わず(非GM)、化学物質よる突然変異とMAS技術(Marker Assisted Selection、DNAマーカー選抜技術)を応用した手法が注目されている、としている。

【関連記事】
・■“共同戦線”でGM小麦の復活を狙う米国小麦業界 No.505
http://organic-newsclip.info/log/2009/120505-1.html


インド・グジャラートのBtワタがワタアカミムシに効かない モンサント Bt毒に対する抵抗性発達を初めて認める

農業情報研究所(WAPIC)
10.3.6




 モンサント社が、土壌細菌・Bacillus thuringiensis (Bt).から分離されたCry1Ac遺伝子を組み込んだ第一世代殺虫性GMワタ(Bollgard-I)はワタアカミムシ(pink bollworm、ピンク綿実蛾)に効かないことを確認した。害虫のBt毒抵抗性発達をモンサント社自身が認めたのはこれが初めてだ。

 モンサントの科学者が2008年11月、インド・グジャラート州のワタ畑でワタアカミムシが異常に生き残っているのを発見した。畑から採取したサンプルをモンサントの試験所で検査、アムレーリー県、バーブナガリ県、ジューナーガル県、ラージコート県の4つの県でワタアカミムシがBtワタに対する抵抗性を発達させていることを確認したという。

 モンサント社は農民に対し、Cry1Acと Cry2Abの2つの遺伝子を組み込んだ第二世代のBtワタ・Bollgard II を勧めている。Bollgard-Iに比べて害虫の抵抗性発達が遅れるからだ。また、非GMワタを植えた害虫の「非難所」を設けることで抵抗性発達を抑える標準的慣行の忠実な実行も勧告する。

 しかし、農業科学者や活動家は、モンサントの勧告は”ばかげている”と言っている。なぜなら、Bollgard IIにはワタアカミムシと闘う毒が追加されているわけではない。抵抗性発達を引き延ばすだけだ。どのみち、ワタアカミムシは生育シーズン後期の害虫だが、Bt毒は90日間しか効かない。さらに、インドの小農民には、米国農民のように「非難所」を設ける余裕などない。

 Bt cotton ineffective against pest in parts of Gujarat, admits Monsanto,Hindu,3.6
 http://www.hindu.com/2010/03/06/stories/2010030664831400.htm
 Bollgard-I vulnerable to pink bollworm: Monsanto,Hindu Business,3.6
 http://www.thehindubusinessline.com/2010/03/06/stories/2010030654020100.htm

 特許料つきの高い種子を売り付けておいて、これはいったいどういうことだ。この発見は、承認をめぐって議論が沸騰しているBtナス(インド GMナスの商業栽培をモラトリアム 開発企業の試験は信用できない、生物多様性への長期影響も懸念,10.2.10)への逆風も強めるかもしれない。

 関連情報
 Btワタの有効性をめぐるインドの論争ー研究者とNGOの抗争,05.9.5
 インド Btワタが播種後110日で標的害虫に無効化の新研究,05.8.3
 インド:Bt毒抵抗性害虫種が増殖、GMワタ拡散に警告,03.8.16


2010年3月6日土曜日

“共同戦線”でGM小麦の復活を狙う米国小麦業界

有機農業ニュースクリップ(2008.12.24)より転載

2004年、米国やカナダのみならず日欧の消費者団体などの反対に直面したモンサントは、ラウンドアップ耐性GM小麦の商業栽培を断念した。この頓挫から5年、米国などの小麦生産業界はGM小麦の“復活”に向けて大きく舵を切っている。



2006年2月には、米国小麦協会と全国小麦生産者協会は共同して、シンジェンタ社の遺伝子組み換えフザリウム耐性小麦の推進を決議する一方、食品業界への働きかけを強めていた。

2009年5月14日、米国小麦協会など米国、カナダ、オーストラリアの小麦生産者団体は、遺伝子組み換え小麦の導入を是とする共同声明を発表した。この中で、2004年に問題となったラウンドアップ耐性のような除草剤耐性ではなく、害虫や病気、干ばつなどへの抵抗性の獲得が可能となるとしている。そして、GM技術は唯一ではないが問題解決の重要な要素であるとも評価し、GM小麦を導入しなければ、他のGM作物に農地を奪われる、と危機感を表明している。その上で、3カ国の小麦生産団体が同時にその商業化へ到達するように努力するとしている。

・共同声明, 2009-5-14
"Wheat Biotechnology Commercialization"
http://www.wheatworld.org/wp-content/uploads/biotech-trilateral-statement-20090514.pdf

これらの小麦生産団体は、5年前のモンサントの敗退の教訓とし、小麦主要生産国の“共同戦線”によって突破しようとしているかのようにも見える。消費者が選択の余地がない状況を作り出せば突破できる、とみているということだ。

この“GM小麦共同戦線”に対して6月1日、米国、カナダ、オーストラリアの3カ国の生産者団体や消費者団体、環境団体など15団体は商業化反対の共同声明を公表した。

・Statement of Australian, Canadian and US Farmer, Environmental and Consumer Organizations , 2009-6-1
http://www.cban.ca/Resources/Topics/GE-Crops-and-Foods-Not-on-the-Market/Wheat/Definitive-Global-Rejection-of-Genetically-Engineered-Wheat

おりしも6月18日、カナダ小麦局(Canadian Wheat Board)は小麦生産農家の多くがGM小麦に反対しているという意識調査を発表した。この調査は09年4月から5月にかけて1300人を対象に行われたもので、69%がGM小麦を導入すべきではないとする一方、すぐに導入するべきとしたのは9%に過ぎなかった。また、51%がGM小麦に興味がないとしている。カナダではGM小麦が歓迎されている、とは言えない。

・Canadian Wheat Board, 2009-6-18
"Farmer optimism clashes with weather fears: CWB survey"
http://www.cwb.ca/public/en/newsroom/releases/2009/061809.jsp

モンサントは2009年7月14日、北米の小麦関連研究開発会社である
WestBred社を買収し、同社の持つ小麦の遺伝資源を手に入れた。この買収に関する発表でモンサントは、明確にラウンドアップ耐性を除外し、干ばつ耐性小麦とチッソ利用率の向上に焦点を当てた開発目標をあげている。少ない水と少ない肥料で収量を上げようということである。しかしモンサントは、その新しい開発目標の商業化には8年から10年かかると見込んでいる。

・Monsanto , 2009-7-14
"Monsanto Company Invests in Developing New Technologies
for Wheat With Acquisition of WestBred Business"
http://monsanto.mediaroom.com/index.php?s=43&item=727

6月に始まった反GM小麦の共同声明には、7月で13カ国91団体が署名している。日本からはほとんど反応がなかったようである。

日本の普通小麦の輸入量は約550万トンで、約360万トン(65.6%)を米国から輸入している。(2008年、貿易統計)

米国      3,603,277[t]  65.6%
カナダ      965,058 17.6%
オーストラリア  924,661 16.8%
フランス      3,509  0.1%
---------------------------------------
合 計     5,496,505[t]


米国がGM小麦の商業化に踏み切れば、“GM小麦共同戦線”のカナダやオーストラリアも歩調を合わせて商業栽培に踏み切る可能性が大きい。その場合、これら3カ国からの輸入小麦に依存している日本の消費者が大きな影響を受ける。

2004年には、カナダなどの小麦生産者と、その小麦を輸入する日欧の消費者の“共闘”による反撃が功を奏し、モンサントはGM小麦の商業栽培から撤退した。現在、カナダでは多くの生産農家が反対している。米国でもワシントン州の生産農家が商業財倍への反対運動を始めている。彼らは、小麦生産量の85%を輸出しているワシントン州の最大輸出先が日本であり、GM小麦の商業化によりその市場を失うことを恐れている。しかし、「日本はGM小麦に反対しているが、GM菜種は受け入れた」とワシントン州小麦委員会の代表は語っている。世界的な需給の逆転が生産者優位の状況に、日本の消費者はその足元を見られているといってもよいだろう。

・Capital Press, 2009-12-19
"Trio fights GMO wheat"
http://www.capitalpress.com/washington/djw-GMOwheat-121809