2008年10月28日火曜日

遺伝子組換え作物の現状と問題点③

● 裏切られた期待(2)減らない農薬、環境にやさしくないGM作物

収量増と同時にGM作物のメリットとして期待された、農薬使用量の減少も期待はずれであった。今、アメリカやカナダでは除草剤耐性雑草「スーパー雑草」が大きな問題になっている。事実上モンサント社のラウンドアップ除草剤耐性大豆やナタネ、トウモロコシが栽培面積の大半を占めた結果、「耐性雑草」が現れたのである。

最近のニューヨーク・タイムス紙によれば、アメリカの大豆農家の半数は除草剤耐性雑草を体験している。その結果、当初は1回だけですんだラウンドアップ除草剤散布は、今では3回散布が当たり前になった。抗生物質多用で院内感染が問題になっている抗生物質耐性菌と同じことが、野外で大規模に起こったのである。

これは耐性雑草と新たな除草剤耐性作物開発のイタチゴッコの始まりである。除草剤多用の影響は、農家にとって経済的負担になるばかりでなく、残留農薬の危険性も増す。このことは1992年の時点で既に明らかになっていた。

除草剤耐性大豆の安全審査に当たって、モンサント社は大豆の残留除草剤濃度基準を大幅に引き上げるよう政府に迫った。その結果、アメリカの家畜飼料となる大豆全草のラウンドアップ残留基準は15ppmから100ppmに引き上げられた。アメリカから大豆を輸入している世界中の国々も、アメリカ政府の要請により、0.1ppmから20ppmに引き上げられた。

日本の大豆の残留基準もそれまでの6ppmから20ppmになった。企業の力は世界の政府の安全基準も変えたのである。最近さらに露骨な残留基準の引き上げが行われた。ラウンドアップの残留基準は、従来はラウンドアップの化学物質名であるグリフォサートとその分解物AMPAの合計値が基準だった。

しかし、アメリカ政府とモンサントは、モンサントの実験結果を無視した形でこの基準値からAMPAを除外し、グリフォサートだけを基準物質とした。これは事実上基準を2倍に引き上げたのと同じである。モンサントの実験によれば、AMPAの毒性はグリフォサートよりもむしろ強い。これは耐性雑草の出現と、除草剤散布量増加に対処するため、安全性を無視したものである。

遺伝子組換え作物の現状と問題点④

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