2008年10月28日火曜日

遺伝子組換え作物の現状と問題点④

● 健康に与える影響

2005年、ロシアの研究者イリーナ・エルマコヴァによって驚くべき研究が行われた。
モンサント社の開発した除草剤(ラウンドアップ)耐性の大豆を食べさせたラットの母親から生まれた子どもの55.6%が低体重児で、生まれてまもなく死亡するという結果が得られた。


イリーナ・エルマコヴァさん

非組換え大豆や大豆を食べさせなかったラットの死亡率は低かった。
これまで、組換え作物の安全性試験は、食べさせた動物自身の健康のみに限られていたが、次世代の安全性までは確認していなかった。この研究は今後大きな影響を与えると思われる。


右・除草剤(ラウンドアップ)耐性の大豆を食べさせたラット

また、2002年、英国で興味ある実験が行われた。除草剤耐性大豆を被験者に食べさせ、時間を追って人工肛門から便を採取、その中の遺伝子の分解度を調べた人体実験である。その結果7名全員から未分解の除草剤耐性DNAと同時に除草剤耐性菌も検出された。これは大豆中の除草剤耐性遺伝子が腸内細菌遺伝子に組み込まれたことを意味する。


右・除草剤耐性大豆

抗生物質耐性遺伝子があれば抗生物質耐性菌が発生した可能性が高い。家畜飼料への抗生物質混入は常態化しており、飼料から抗生物質耐性遺伝子が供給されれば耐性菌の発生は避けられない。

多くの遺伝子組換え作物の開発には、組換え遺伝子を大腸菌で増殖させ、組み換え体を非組み換え体から選別するために「抗生物質耐性遺伝子」が組み込まれている。これは、いったん組換え体が分離出来れば無用の長物である。

北海道農業研究センターが開発した酸性土壌耐性イネや岩手生物工学研究センターの開発した「耐寒性イネ」には、「カナマイシン耐性」と「ハイグロマイシン耐性」の二つの抗生物質耐性遺伝子が入っている。これらは、イネの中で発現しているばかりでなく、食べれば腸内細菌に取り込まれて「抗生物質耐性菌」に変わる恐れがある。

こうした危険性があるため、世界保健機構(WHO)は早くから遺伝子組換えにおいて抗生物質耐性遺伝子の使用を中止するように勧告してきたが、必要悪として今も使われている。こうした、基本的な問題解決こそがまず必要である。遺伝子組換え作物は、従来人間の食習慣になかった土壌細菌の遺伝子が作るたんぱく質を含むため、アレルギーの危険性が増す。

例えば除草剤耐性大豆のたんぱく質には、イエダニのアレルゲンと同じアミノ酸配列が含まれており、予期しない健康被害もありうる。アレルギーのあるなしは、遺伝子組換え作物の安全性に関わる大きな問題である。

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