田中正治
- なぜヨーロッパ並みの農業者への直接的戸別所得補償制度が必要なのか
理由その1 農村、農業、農民の現状
1, 農業者の老齢化―リスト1
2, 農業者(家族農業)の急速な減少―リスト2
3, 家族農業後継者の急速な減少―リスト3
4, 中山間地での耕作放棄地の激増―リスト4
5, 農山村コミュニティーの空洞化と崩壊現象
6, 大規模企業化農業は増大するも、撤退も多いーリスト5
理由その2 国際情勢の変化
1 気候変動・温暖化―世界全体でも、コメ、小麦、大豆などの主要穀物の平均収量が減少。干ばつや洪水といった異常気象が飢餓を増加させるリスクを高めている。-リスト6
2 戦争の長期化によるインフレーションー食料輸入の困難。ロシアとベラルーシは敵対国に小麦、トウモロコシの輸出禁止による世界的な食糧危機。日本の食料供給の脆弱性を浮き彫りにした。―リスト7、リスト7
3 食料争奪戦の激化―日本の経済力低下による買い負け現象。日本の食料システムは国際情勢の変動に非常に弱い状態。―リスト8
4 日本の食料自給率38%。食糧危機に対して極端に脆弱。食料危機対策のために―リスト9
理由その3 農業と工業との根本的相異
1 農業は、気候、土壌、地形に左右されると同時に水、太陽、土壌成分、気温、小動物や微生物、種子、季節のリズムなど自然環境そのものに依存しており、人間がコントロール・効率化しうる部分は極めて少ない。
従って、今日の経済の下では、商品としての農産物全体の市場価値は少なくならざるを得ない。
2 それに対して工業は、自然から原料を収奪・切り離されれば、非自然的空間(工場)で加工し、生産の効率化、:生産手段の高度化や自動化により、効率的な大量生産が可能であり、今日の経済の下では、商品としての工業製品全体は、農業生産物に比べると市場価値は断トツに多くなりうる。
3 従って、食べ物なしに生きていけない人間は、市場経済では圧倒的に不利なこの農業に対して、飢えないためには人々全体が、社会全体(国家)が、農業と農業者たちの生活が成り立つための支援をすることは不可欠であり、食糧危機が迫る現在、この支援は、実は消費者が生きていくために絶対的に必要不可欠なこととなっている。
B)農業者への直接的戸別所得補償制度実現へのVISION
- 農業者への直接的戸別所得補償制度の復活(EU,スイスモデル)と米価水準と市場価格との差額を農業者に全額補償(米国モデル)の実現
- 鈴木亘弘氏が提起している防衛費から農業予算へのシフトを含めた「食料安全保障確立助成金」創設を支持する。
- その戸別補償直接支払に関する見解は以下。(「食の属国日本)p200
- 農地が維持されることによる安全保障や多面的機能の発揮への基礎支払
- 農家所得を維持して消費者価格も抑制する追加支払い
- 政府買入れによる備蓄と国内外援助で、自給の最終調整弁を国が持つ。
- 農業者への直接支払いに関しては以下。
- 農地維持基礎支払 10a・3万円 432haで1.3兆円。
2 農業経営安定・消費者価格抑制追加支払い
米60kg 3000円(10a 3万円で3500億円
牛乳1kg10円(1頭10万円)で750億円
3要穀物及び乳製品の備蓄・援助買い入れ
米60kg 1,2万円 500トンで1兆円
総計 約2・7兆円
農林水産関係予算額は、令和6年度当初予算で、2兆2,686億円(2024年度)これに上記のの直接的戸別所得補償を単純に加算すると約5兆円になる。以前の水準に復帰。
4 これらの直接所得補償によって、新規農業希望者が都市から農山村の大規模に移住し、特に中山間地コミュニティー再生に大きな役割を果たしうるだろう。
5 これらの直接所得補償制度は、農民を元気にし、各地の農業、農村を活性化かさせることしよって、各地域の自給率を引き上げ、その結果国家全体の自給率を50%以上に引き上げることを期待される。
農業者の老齢化―リスト1
農業者(家族農業)の急速な減少―リスト2
家族農業後継者の急速な減少―リスト3
中山間地での耕作放棄地の激増―リスト4
大規模企業化農業は増大するも、撤退も多いーリスト5
気候変動・温暖化―リスト6
戦争の長期化によるインフレーションーリスト7
ロシアによるウクライナ侵攻以来の食料システムリスク
食料争奪戦の激化―リスト8
世界の農産物の買い負け(日本3位)米国―中国
日本の食料自給率38%―リスト9
種と飼料の海外依存度を考慮した日本の2020年と2035年の食料自給率
東京大学鈴木亘弘研究室
立憲民主党の食料確保・農地維持支払制度
なお、上記立憲民主党の直接支払額(1兆②000億円)と鈴木亘弘氏の直接支払額・農地維持基礎支払 10a・3万円 432haで1.3兆円。はほぼ同じで、知人によれば、立憲民主党は鈴木氏と討論したとのことです。リアルな額だと思います。