2015年6月24日水曜日

【遺伝子組み換え】有機農業ニュースクリップ No.675「農水省ミツバチ被害調査 多くで水稲用浸透性農薬を検出」

【転載】
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   有機農業ニュースクリップ

                   2015.06.24
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≪ 今日の目次 ≫
 ■農水省ミツバチ被害調査 多くで水稲用浸透性農薬を検出
 ■「GMO清浄国」を目指すロシア
 ■フランス:クラゲの遺伝子を組み込んだGMラム肉が流通


≪ 農薬 ≫
■農水省ミツバチ被害調査 多くで水稲用浸透性農薬を検出

  農水省は6月23日、2014年度のミツバチ被害調査結果を、水田の農薬散布期を間近になりやっと公表した。発表によれば、報告があった被害は79件で、約3300箱でミツバチが死ぬ被害が出ているとしている。被害は、7月から9月の水稲開花期に、その約75%が集中し、ほとんどが農薬が原因と分析している。農水省は、こうした被害は蜂群崩壊症候群(CCD)はないと断定した。この調査は、養蜂家・養蜂業者から都道府県に報告があったものを集計しているため、報告漏れはカウントされていない。被害はさらに大きかった可能性がある。

  発表によれば、死んだ蜂が採取されたのは37件。そのうち26件で、ネオニコ系などの農薬を検出している。ミツバチ死はこれらの農薬に暴露したことが原因と考えられる、と分析している。

  水稲開花期とその前後での被害は52件あり、死んだ蜂を回収できた22件のうち15件から高い濃度の5種類の農薬が検出されたとしている。複数の農薬が検出された例もあり、延べ28剤が検出されている。このうち25剤が浸透性農薬で、ネオニコ系が延べ18剤、フィプロニルなどのフェニルピラゾール系が延べ7剤検出されたとしている。この農薬を検出した15件は、水稲のカメムシ防除に使用された殺虫剤の可能性が高いと判断している。

  また、農薬散布の方法では、水稲開花期とその前後の被害52件のうち29件で、無人ヘリによる農薬の空中散布が行われていたことが明らかになった。

 ● 規制強化に踏み切らない農水省

  今回の調査で判明しているように、原因として推定されている検出農薬はフィプロニルを含む浸透性農薬が9割を占めている。これらの浸透性農薬について、水稲への使用をやめることで、ミツバチばかりでなく、昆虫類の減少を防ぐことができることを示している。また、約6割が空中散布であったことは、空中散布による散布農薬の周辺部への拡散のを抑え、被害を低減できる可能性も示しているといえる。

  欧米が規制強化に動く中、農水省はこれまでと変わらず、抜本的な規制には踏む出していない。農水省の対応策は、水田に巣箱を近づけないこととか、ミツバチの活動時間帯での散布を避けるなどといった、対策と呼ぶにはあまりも貧弱なものにとどまっている。農水省の「慎重」な姿勢が際立っている。

 ・農水省, 2015-6-23
  平成26年度蜜蜂被害事例調査の結果と今後の対策について
  http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/nouyaku/150623.html

  平成26年度蜜蜂被害事例調査結果
  http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/nouyaku/pdf/150623-01.pdf

  平成26年度蜜蜂被害事例調査の結果と今後の対策について
  http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/nouyaku/pdf/150623-02.pdf

  平成27年度の蜜蜂被害軽減対策の推進について(通知)
  http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/nouyaku/pdf/150623-03.pdf

【関連記事】
 No.672 米国EPA
     ミツバチ受粉期限定“農薬フリーゾーン”を提案
  http://organic-newsclip.info/log/2015/15050672-1.html

 No.656 米国EPA ネオニコ系4農薬の新規登録を凍結 
   http://organic-newsclip.info/log/2015/15040656-1.html

 No.656 規制強化の流れに逆行する農薬行政
     新たにネオニコ系11剤を登録 「予防原則」は否定
   http://organic-newsclip.info/log/2015/15040656-2.html


≪ 遺伝子組み換え ≫
■「GMO清浄国」を目指すロシア

  遺伝子組み換え作物・食品に規制強化の動きを強くしているロシアは、GM作物栽培の全面禁止に動く模様だ。ロシアのドブロコビッチ副首相は6月19日、サンクトペテルスブルグ国際経済フォーラムの席上、ロシアの農業生産性向上に遺伝子組み換え技術を使わない、と表明したとインターファックスが伝えた。ドブロコビッチ副首相はまた、これによりロシアの農産物が「世界で最も清浄な物の一つだと」語ったという。

 ・Sustinable Pulse, 2015-6-21
  Russian Deputy PM Confirms ‘Clean Products’
  Benefit of GMO Free Agriculture
  http://sustainablepulse.com/2015/06/21/russian-deputy-pm-confirms-clean-products-benefit-of-gmo-free-agriculture/

 ● GM規制を強化するロシア

  プーチン大統領は昨年3月、遺伝子組み換え食品の過剰消費から消費者保護が必要だ、とロシア連邦会議委員会のメンバーとの会談で表明している。

  メドベージェフ首相は2014年4月、ロシアのWTO加盟条件であったGM作物の作付解禁期限が2014年7月に迫っていたが、その履行を2017年まで3年間延長すると発表した。メドベージェフ首相はまた、GM食品を輸入しない意向であるとも明らかにしている。

  ロシアは、国内ではGM作物の栽培は認めておらず、流通しているGMl食品は、輸入が認められた18種類に限られている。ロシア政府時は、この数年、GM食品に対する規制を強化している。14年12月成立したGM食品表示義務法は、GM成分を含む食品の曖昧な表示を禁止し、明確な表示を義務つけるもので、違反した場合、問題の食品は没収されるとともに、罰金が科せられることになった。

  今回の副首相の見解表明は、ここ数年のロシアのGM規制強化の一環といえる。WTO加盟条件との関係が明らかになっていないが、今後、WTOの紛争処理に上がることが考えられる。その場合、こうしたロシアの反GM政策が腰折れすることなく貫けるのか、難しい局面がまちかまえていそうだ。

  しかし「GMO清浄生産国」となれば、欧米の対ロシア経済制裁が解除された後には、米国が一番の相手先になりそうな状況もある。米国は、GM作物のようなジャンクな農産物を大量に輸出する一方で、有機農産物などの良質な農産物を世界中から集め、その輸入が増えているという現実がある。残念ながら日本は、この米国産ジャンク農産物を大量に輸入している国の一つである。

 ・Sustinable Pulse, 2014-3-28
  Vladimir Putin: Russia Must Protect Its Citizens from GMOs
http://sustainablepulse.com/2014/03/28/vladimir-putin-russia-must-protect-citizens-gmos/

 ・Russia Today, 2014-4-23
  Russia postpones planting of GMOs by 3 years
  http://rt.com/news/154032-russia-gmo-food-ban/


■フランス:クラゲの遺伝子を組み込んだGMラム肉が流通

  フランス国立農業研究所(INRA)の遺伝子組み換えヒツジが昨年8月、パリで売られて消費されていたことが明るみになった。このGMヒツジは、クラゲの緑色蛍光タンパク質の遺伝子を組み込んだもの。GM母ヒツジから生まれた子ヒツジを、不満をを持った職員が故意に流出させたという。昨年11月、内部告発で判明していた。

  このGMヒツジは、移植医療研究用に開発されたもののようだ。流出し、販売されたGMラムによる健康影響について、INRAは健康リスクはないと語ったという。このようなGM食肉の販売はフランスでは違法で、司法当局が調査を始めているという。

 ・EuroNews, 2015-6-24
  Lamb with jellyfish protein sold and consumed in Paris
  http://www.euronews.com/2015/06/23/offspring-of-lamb-with-jellyfish-protein-sold-and-consumed-in-paris

 ・AFP, 2015-6-24
  遺伝子組み換えクラゲ・ラム、食肉として販売 仏
  http://www.afpbb.com/articles/-/3052565

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