2012年9月5日水曜日

【遺伝子組み換え】GMゴールデンライスで人体実験

転載
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 有機農業ニュースクリップ

                     2012.09.05
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≪ 遺伝子組み換え ≫
■明るみに出た GMゴールデンライスで人体実験
  グリーンピースは8月31日、β-カロテンを強化した遺伝子組
 み換えのゴールデンライスの人体実験が、2008年に中国で行われ
 たとの論文が見つかったと発表した。問題の論文は7月に、アメ
 リカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリションで発
 表された。

  この人体実験は、米国・タフツ大学の研究チームによって、中
 国湖南省衡陽市で、健康な72人の6歳から8歳の児童を対象に行わ
 れたもので、放射性炭素C13で標識化されたゴールデンライス、
 ホウレンソウ、合成カロテン使われた。72に人のうち24人に、1日
 当たり60グラムゴールデンライスが3週間にわたって与えられた
 という。アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュート
 リションで発表された論文では、ゴールデンライスのβ-カロチ
 ンが油中のβ-カロチンと同等であった、としている。

 ・グリーンピース, 2012-8-31
  "Chinese children used in US-backed GE food trial"

 ・アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション
  "β-Carotene in Golden Rice is as good as β-carotene in oil at providing vitamin A to children"

 ・Shanghai Daily, 2012-9-1
  "US study feeds kids GM rice"

  湖南省政府の担当者は9月1日、このグリーンピースの告発を否
 定し、衡陽市のスポークスマンは、この実験が「ゴールデンライ
 スや他のGM食品を使ったもので」ではなく「すべての食品は中
 国産」であり、「実験について、事前に親に連絡されていた」と
 語った、と新華社は報じている。また、湖南省政府の担当者は、
 この研究には米国の研究者は関与していない、としている。

 ・新華社, 2012-9-1
  "China Denies Greenpeace GM Rice Test Claims"

  こうした中国側の関係者の“苦しい”言い訳が事実であるとす
 れば、発表された論文が宙に浮くことになる。おそらくグリーン
 ピースの発表が正しいのだろう。中国政府は、みっともない言い
 訳をせず、事実関係を明らかにし、ゴールデンライスを与えられ
 た児童に健康被害がなかったかも明らかにすべきである。当然、
 タフツ大学などの米国側関係者も、同様に事実関係を明らかにす
 べきだ。

  このようなGM作物による人体実験では、2007年ごろ、米国の
 GMベンチャー・Ventria Bioscience社によるものがある。同社
 はペルーで、乳幼児に対して、ヒトのタンパク質産生遺伝子を組
 み込んだ遺伝子組み換えのコメによる下痢止め薬の人体実験を行
 い、大きな非難を浴びた。

  また、ゴールデンライスを使った2相試験が行われたとすれば、
 それ以前にラットなどによる試験が行われていたはずである。グ
 リーンピースは、この点については言及していない。それらにつ
 いても、掘り起こしとともに、問題がなかったかの確認が必要だ。

 ・新華社, 2012-9-1
  "China Denies Greenpeace GM Rice Test Claims"


  ゴールデンライスはコメにスイセンの遺伝子を組み込み、β-
 カロテンを産生するようにした遺伝子組み換えのコメである。開
 発当初、1日の必要なβ-カロテンをゴールデンライスから摂ろ
 うとすると、1キロ以上食べなければならず、非現実的であると
 非難された。ビタミンAの不足による健康障害には、そもそも野
 菜などのおかずが満足に食べられない経済的な問題が大きく、
 ゴールデンライスは意味のないものとする意見が大勢であった。
 食料危機のなか、依然としてこの批判は生きている。

  あえて遺伝子組み換え品種を持ち込む必要もない。たとえば、
 ナイジェリアでは、F1品種ではあるものの、β-カロテンを
 75%強化したトウモロコシが実用化されている。他にも、β-
 カロテン強化のサツマイモなどが実用化されている。

  しかし、開発したシンジェンタ社は、ゴールデンライスの特許
 使用権を、“非営利”と自称する Golenrice Project に供与し、
 IRRI(国際イネ研究所)とともに、商業栽培へ向けた活動を行っ
 てきている。ちなみにIRRIの開発チームの責任者は、モンサント
 出身である。

  ゴールデンライスの商業栽培へIRRIなどは2011年、ゲイツ財団
 やヘレン・ケラー財団などから補助金を得ている。現在、バング
 ラディシュとフィリピンで試験栽培が実施され、2013年度からの
 商業栽培がアナウンスされている。この操業栽培では、ゴールデ
 ンライスの形質を、両国の「コシヒカリ」のような一般的なコメ
 の品種に導入され、広範な栽培を目論んでいる。今年に入って、
 ゴールデンライスは、ベトナムへも供与されていると報じられて
 いる。あまり表面化しないものの、アジアでの遺伝子組み換えの
 コメの商業栽培の目論見が進行している。

  こうした状況の中で、バングラディシュとフィリピンの商業栽
 培を許すのか。その帰趨は、日本での商業栽培とも無縁ではない
 はずだ。農水省などの資料でも、日本での栽培可能性があるのは、
 コメぐらいしか残っていないと思われる。現在、農業生物資源研
 究所が開発に力をいれているのは、4大GM作物(ナタネ、ダイ
 ズ、トウモロコシ、ワタ)ではなく、遺伝子組み換え複合病害抵
 抗性イネである。

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