2012年6月23日土曜日

有機農業ニュースクリップ No.535

【転載】

━ No.535  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   有機農業ニュースクリップ

2012.06.19    
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≪ 今日の目次 ≫
■米国:成長するオーガニック産業
■FAO:食料システムのエネルギーの削減とシフトを提言
■止まらない未承認GM米検出
■遺伝子組み換え関連情報ページを公開しました


≪ 有機農業 ≫
■米国:成長するオーガニック産業
米国のオーガニック・トレード協会(OTA)は先ごろ、2011年の米国におけるオーガニック産業の売り上げが315億ドル(2兆5千億円)に達したとの調査結果を公表した。内訳は、食品部門が292億ドル、衣料などが22億ドル。前年比9.4%の成長としている。

OTAの調査によれば、有機認証の農家や企業は17,600に達し、94%の経営体が2012年に従業員数の維持あるいは増強を計画している。食品部門のシェアは4.2%で前年よりアップすると見込まれている。こうしたオーガニック産業の成長は2012年も続き、前年比9%台の見込みであると分析している。

・Organic Trade Association, 2012-4-23
"Consumer-driven U.S. organic market surpasses $31 billion in 2011"
http://www.organicnewsroom.com/2012/04/us_consumerdriven_organic_mark.html

OTAはまた、成長する米国のオーガニック産業は、2010年、新たな雇用を50万人創出したと発表した。10億ドルの売り上げにつき21,000人の雇用を生み出しているとしている。これは、食品業界が慣行農業によって生み出す雇用より21%多くの雇用を創出している、と分析している。

・Organic Trade Association, 2012-4-25
"Organic foods industry creates more than a half million jobs"
http://www.organicnewsroom.com/2012/04/organic_foods_industry_creates.html

欧米の有機セクターが成長産業であるのに対して、日本での成長性はどうか。日本の有機農業関連の2010年の規模は、1千億円あまりとの調査結果も公表されている。まだ、米国の20分の1の規模に過ぎない。

日本では、2007年に有機農業推進法が公布され、都道府県レベルの有機農業推進計画が策定されてはいるが、それが現状とマッチして有機農業を“推進”しているのか、検証が必要である。また、2011年から環境直接支払いが制度化され、それまでの団体のみへの支援から、直接に個人へも支援する制度へと変更された。この環境直接支払への参加者の申請した技術区分をみると58%が「有機農業」となっている。しかし、農水省の分析でも、有機農業のシェアは0.23%(2010年度)にとどまっていて、「(環境直接支払いが)農業全体の中で有機農業の増大に資する状況には至っていないと考えられる」と分析している。まだまだ制度的なテコ入れが足らないということであるとしても、それを待っていても進まないことも確かだ。

・農水省, 2012-5-25
環境保全型農業直接支援対策の事業効果等の検証のための調査結果
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/kentokai/pdf/siryo2.pdf


≪ 食料システム ≫
■FAO:食料システムのエネルギーの削減とシフトを提言
国連農業食糧機関(FAO)は6月14日、「国連持続可能な開発会議
(RIO+20)」を前にして、世界的な食料生産とエネルギーに関する報告書
を公表した。

この報告書の分析は、現状を次にように分析している。

・食料生産と流通で消費されるエネルギーは、世界のエネルギーの30%であるが、そのうち実際の生産で消費されるのは30%であり、残り70%が流通などで消費される。
・食料システムにかかるエネルギーの40%が無駄に消費され、生産された食料の3分の1に相当する13億トンが無駄に廃棄されている。
30億人が暖房と料理用に現代的なエネルギーサービスの恩恵にあずかっているが、14億人は限定的またはゼロである。
・世界的な人口増加に対し、2050年までに60%の食料供給増が必要。

こうした現状の打開には省エネルギーが必要であり、そのために食料システムが化石燃料ではなく太陽光、風力、小水力、バイオマスエネルギーなどの再生可能エネルギーへのシフトが必要だとしている。そのためには、不耕起栽培や、総合的な害虫・雑草管理による農薬や化学肥料の低減、省エネ型の品種の導入を挙げている。

さらには70%のエネルギーを消費している流通に関して、貯蔵施設の断熱、簡易包装、廃棄食品の低減、効率的な調理も挙げている

・FAO, 2012-6-14
"Road to Rio: Improving energy use key
challenge for world’s food systems"
http://www.fao.org/news/story/en/item/146971/icode/

"Energy-Smart Food at FAO"(本文)
http://www.fao.org/docrep/015/an913e/an913e.pdf


≪ 遺伝子組み換え ≫
■止まらない未承認GM米検出
2011年1月から12年5月までの17か月間で、厚労省が公表した輸入食品の未承認遺伝子組み換え成分検出事例は7件。ベトナム産4件、中国産2件、カナダ産1件。ベトナム産、中国産のビーフン、ライスヌードル、米粉からコメの害虫抵抗性のGM成分が検出され、カナダ産の穀類ミックス品からは除草剤耐性亜麻が検出されている。

2011.07 うるち米粉    中国   コメ Bt
2011.10 ライスヌードル  ベトナム コメ CpTI
2011.11 ビーフン     ベトナム コメ CpTI
2011.12 穀類調整品    カナダ  亜麻 FP967
ビーフン     中国   コメ 63Bt、NNBt
2012.01 ビーフン     ベトナム コメ CpTI
2012.05 ライスヌードル  ベトナム コメ CpTI

・厚労省:輸入食品監視業務・違反事例
http://www.mhlw.go.jp/topics/yunyu/ihan/

コメ製品から検出された害虫抵抗性遺伝子組み換え成分は、Bt63、NNBt、CpIIの3種類。中国もベトナムも公式にはGMのコメは承認していないが、中国の研究機関から“流出”と見られるものが、広範囲に汚染を広げている可能性があり、欧米や日本は輸入検査を強化している。

2011年10月にベトナム産ライスヌードルから害虫抵抗性GM成分CpTIが検出された際には、ベトナム産のコメとコメ加工品への輸入時の検査強化の通達(2011年11月7日付け)が出されている。しかし、ベトナム側での検査では、問題のGM成分は検出されなかった、と報じられている。ベトナム産ライスヌードルは、ホーチミン市の業者が輸出したものだが、原料生産地については報じられていない。

・厚労省, 2011-11-7
食安輸発1107第2号
「ベトナム産米及び米加工品の輸入時検査の強化について」
http://www.forth.go.jp/keneki/kanku/syokuhin/tsuuchi/2011/11/7_3.pdf

・Thanh Nien, 2011-11-17
"Vietnam probes Japan's claim of GMO detection in pho"
http://www.thanhniennews.com/2010/pages/20111117-vietnam-investigates-japan-claim-of-gmo-detection-in-pho.aspx

欧州でも、中国産の未承認遺伝子組み換えコメ製品の混入事例は相次いでいる。EUでも2011年11月14日、規制強化を発表している。

・EuroBrussels, 2011-11-15
"EU imposes stiff controls to block Chinese GM rice"
http://euobserver.com/885/114287

2012年1月から3月にかけて、欧州各国で合計6件のBt米が検出されている。日本での検出事例はないものの、インドやパキスタン産からもGM米が検出されている。

昨年12月に見つかったカナダ産のGM亜麻は、コストコ(米国系会員制スーパー)の輸入した6種類の穀類のミックス製品(GLANOLA MIX KIT)への混入が見つかり、焼却命令を受けている。

カナダ産のGM亜麻は1996年、飼料用として承認されたものの商業栽培はされなかった。しかし、屋外試験栽培により汚染が拡がったと見られている。2009年にドイツで発見され、EU諸国はカナダ産亜麻を輸入禁止としたため、カナダは大きな損害を受けた。

一度、組み換え遺伝子が環境中に放出されると、取り返しのつかない事態を招くことが、こうした検出事例からも容易に理解できる。その点では、まだ隔離圃場での試験栽培にとどまり、本格的な商業栽培が行われていないことは“不幸中の幸い”かもしれない。しかし、隔離圃場からの“流出”がないとは言いきれないのは、カナダの例からも明らかである。


■遺伝子組み換え関連情報ページを公開しました
この間、twitterで放射能汚染関連情報とともに、遺伝子組み換え関連情報を流してきました。放射能汚染関連は、すでにまとめのページを公開しています。このほど、遺伝子組み換え関連情報についても、ある程度の分類とともに、まとめのページを作成し公開しました。こちらも、随時更新しています。

・遺伝子組み換え関連情報
http://organic-newsclip.info/gmo/

・放射能汚染関連情報
http://organic-newsclip.info/rad/

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