2010年11月20日土曜日

TPPをにらみ農家の大規模化を促進 鹿野農相 日本農業破滅への道

農業情報研究所より転載


鹿野道彦農相が11月18日の参院予算委員会で、農家への戸別所得補償制度に関連し、大規模化を促すために作付面積の多い農家を優遇する「規模加算」導入に強い意欲を表明した。

 また、19日のNHKの番組に出演後、「戸別所得補償制度を拡充し、作付面積の多い農家を優遇する「規模加算」を2011年度から導入する方向で検討することを明らかにした。環太平洋連携協定(TPP)をにらみ、農家の大規模化を促進して生産性向上を図り、日本農業の競争力を高めるのが狙い。11年度の農業予算の在り方を議論するため設置した「関係4大臣会合」で調整する見通しだ」という。

 農相、大規模化へ加算金に意欲 戸別所得補償で  47news 2010年11月18日
 http://www.47news.jp/CN/201011/CN2010111801000851.html
 大規模農家に「加算」 農相、11年度から導入方針 中日新聞 2010年11月19日
 http://www.chunichi.co.jp/s/article/2010111901001021.html

 ということは、TPP参加は既定の事実であり、またコメ等重要品目の一層の市場開放も既定の事実であるということだろう。しかし、「農家の大規模化を促進して生産性向上を図り、日本農業の競争力を高める」ことが日本農政のTPP対策とは、笑止千万だ。

難しい話ではない。TPPに参加するベトナムはタイと並ぶ世界最大の米輸出国だ。その今年1月から10月までの米の輸出量は556万トン、輸出額は23億 5000万ドルである。トン当たり平均輸出価格は423ドルで、1ドル=85円で換算すると3万5870円だ。キロ35.9円、60キロ2154円の計算だ。ところで、日本の米生産費は、農水省米生産費調査(平成21年)で知ることができる最大規模の15ヘクタール以上作付農家の平均でも1万円を超えている(11,206円)。ベトナムで栽培されるインディカ米は、こんな価格差があっても日本の米飯用米として急増することはない(米粉用市場は別)。しかし、米を自由化対象に含めた貿易自由化協定が結ばれれば、ベトナムもタイもジャポニカ米栽培を急速に増やすだろう*。日本の最大規模の米農家でも、価格競争では競争にならないことは明らかだ。この大差を所得補償しようとすれば、持続不能な国家財政=納税者負担が生じることも明らかだ。

  *自由貿易協定の経済効果評価の専門家である川崎賢太郎氏→
  http://www.maff.go.jp/primaff/kenkyu/kenkyuin_syokai/pdf/primaffreview2004-12-11.pdf

 そもそも、規模拡大で国際競争力を増すという発想が時代錯誤だ。日本よりはるかに規模拡大が進んだフランスでさえ、そんな発想はとっくの昔に捨てている。農業の多面的機能への直接支払を打ち出した1999年農業基本法の制定に際し、その提案理由説明は次のように述べている。

 「欧州農業は最も競争力が強い世界の競争者と同じ価格で原料を世界市場で売りさばくことを唯一の目標として定めるならば、破滅への道を走ることになる。それはフランスの73万(1995年末)の農業経営のうちの少なくとも30万の経営を破壊するような価格でのみ可能なことであり、そんなことは誰も望んでいない」、「農業のための大きな公的支出は、それが雇用の維持、自然資源の保全、食料の品質の改善に貢献するかぎりでのみ、納税者により持続的に受け入れられる」(北林寿信 「方向転換目指すフランス農政—新農業基本法制定に向けて—」 『レファレンス』<国立国会図書館> 1999年3 月号 58頁)。


 EUも同様な方向を目指してきた。11月18日に発表されたばかりの2013年以後の共通農業政策(CAP)のあり方を示す欧州委員会の青写真も、公的補助を正当化するためには農民に一層の環境保護を求めねばならないと強調している。

 Commission outlines blueprint for forward-looking Common Agricultural Policy after 2013,European Commission,10.11.18

 こんな時代に、なぜTPP、なぜ規模拡大優先農政なのか。

 日本の米が競争力をつける最短の道は、規模拡大ではなく、生産方法(有機、減農薬、環境保全)や品質の差別化である。国はフランスの多面的機能への直接支払にならい、農家のこのような努力をこそ支援せねばならない。

[規模拡大一般を無意味というつもりはない。自由化対策としての規模拡大にはほとんど意味がないということだ]


2010年11月14日日曜日

COP10報告会「生物多様性と先住民族」

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     COP10報告会「生物多様性と先住民族」
生物多様性条約名古屋会議(COP10)における先住民族の主張

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 2010年10月に名古屋市にて開催された生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)では白熱した議論が繰り広げられました。この名古屋会議では、遺伝資源へのアクセスと利益配分のルールを定めた「ABS名古屋議定書」や、生態系を保全するためのポスト2010年国際目標「愛知ターゲット」などが採択されました。議定書には、先住民族の伝統的知識も利益配分の対象にすることも盛り込まれました。また、先住民族・地域共同体の文化的知的遺産を尊敬するよう定めた倫理的行動規範も採択されました。

 COP10には、世界の7つの地域(アジア、太平洋、北米、中南米、アフリカ、ロシア、北極圏)から「生物多様性に関する国際先住民族フォーラム(IIFB)」の代表団が参加し、日本からはアイヌ民族や琉球・沖縄民族も参加しました。準備会議(10月15~17日)から本会議(10月18~29日)にかけて、180名ほどの先住民族が活発な議論、交渉、交流を行い、生物多様性保全のためのさまざまな取り決めの実施・評価にあたり、先住民族からの主張の重要性をアピールしました。

 名古屋会議では、特にIIFBの議論に立ち会うために有志による取材班が結成され、精力的な取材が行われました。先住民族の視点からみた生物多様性に関するホットな報告会を行います。奮ってご参加ください。



●日時:2010年11月26日(金)午後6時30分~8時30分

●会場:アイヌ文化交流センター
   東京都中央区八重洲2-4-13 アーバンスクエア八重洲3階
   東京駅八重洲南口より徒歩4分
   地図→ http://www.frpac.or.jp/prf/c_map.html

●報告者:青西靖夫、木村真希子、細川弘明(COP10先住民族ニュース取材班)

●資料代:500円
*予約不要。どなたでも参加できます。

■主催
先住民族の10年市民連絡会
明治学院大学国際平和研究所(PRIME)
COP10先住民族ニュース取材班

■連絡先
先住民族の10年市民連絡会 
Tel/Fax:03-5932-9515  
E-mail:postmaster@indy10.sakura.ne.jp

2010年11月7日日曜日

お漬物「最上かぶ」の歴史

阿部文子


(写真 豪雪地帯・新庄)

12月12日に行われるネットワーク農縁の収穫・感謝祭。ネットワーク農縁のお百姓さんと都市の会員が、山野の恵に感謝し集うお祭りの日。

その日は山形・新庄から恵を積んで、はるばる来てくれるお百姓さんを迎える会員さん、再会を喜ぶ百姓衆、あちこちで感謝の花が咲く。ネットワーク農縁にとってうれしい一日である。

炊きたての新米、「さわのはな」や「ひとめぼれ」に欠かせないのが、新庄のお漬物。酢漬けや塩漬け、麹づけ等、色とりどりのお漬物。中でもひとしお異彩を放つ“最上かぶ”。セクシーピンクと白のかぶである。


(写真 赤カブの漬物)

山形県各地には20種類近くの在来種のかぶがあるそうだが、私たちにおなじみは最上地域を代表する“最上かぶ”。地面から出た部分がセクシーピンクに着色し、土中にある部分は白である。そのセクシーピンクの清々しさ。どうしてこんな色がつくのだろう。

なぜ山形県に在来種のかぶが多いのか。「かぶが飢饉の年に人の命を救う」という言い伝えがある。雪深い国の人々の自然との闘いの厳しさと、切ない生活の思いを表していた。

「8月も過ぎれば、今年主食の米が凶作になりそうかどうかわかります。8月に種をまくかぶは、生育期間が2-3ヶ月と短いので、播種後1か月には、間引き菜を食べることが出来、降雪前の11月ごろには、収穫可能になります。

つまり、冷夏で凶作とわかってからでも、種を多めにまいて冬の食料に備えることが出来るのです!収穫したかぶの一部は、漬物でも保存できますが、大部分は生の状態で家の入り口に積み上げられ、わらで囲った「かぶらちぼけ」と呼ばれる貯蔵場所に保存されます。

こうして飢饉の年でも、翌春山菜が出始める季節までかぶを保存しながら、飢えをしのぐことが出来たのです。」(「おしゃべりな畑」やまがた在来作物研究会)


こうした人々の窮状を救った雪深い国のかぶ。12月―3月まで、雪に閉ざされる新庄。今日も変わらぬ豪雪地帯ではあるけれど、うれしいことにこうした思いをすることはなくなっている。

そして、本来のおいしい漬物として“最上かぶ”は、収穫・感謝祭に華を添え、私たちを楽しませてくれている。ネットワーク農縁の収穫・感謝祭は、2010年12月12日(日)、東京のJR赤羽駅前、赤羽文化センターで、11時半開場です。


2010年11月3日水曜日

さわのはな生産者からのメッセージ 2010年10月15日

無農薬・無化学肥料の「さわのはな」を作っているお百姓さんたちのメッセージです。





【 今田 多一 】

● コンバインでの稲刈りは終わっていたが、6日から5日間仕事を休む。急に下痢をもよおし、食欲はなくなり何をするにも力が入らない。医者に診てもらうと整腸剤を処方されたが、なお下痢が止まらず、痩せてゆくのがわかる感じだった。再診を受け血液検査をしたら白血球値が異常に高く、ウィルス性のものだとの診立てになり抗生剤を飲んだらピタリと止む。このたびは疲れた体、弱った体にウィルスが入るのを体験する。

 夏の猛暑でやはり高温障害が出た。コメの玄米に腹白が異常に多く、見た目も悪い。昼と夜の寒暖の差も少なかったからか、平年より食味も若干落ちる感じだ。そして、カメムシの斑点も多い。栽培管理には私なりに努力したつもりですが、自然条件、気象条件などの影響を理解して食べていただくと大変ありがたい。





【 笹 輝美 】

● 猛暑が過ぎ、いざ稲刈りとなったら毎日雨、アメ、あめ。茎が長く柔らかい品種は倒伏したり、田んぼはぬかるんでコンバインでの作業も難渋を極めた。収穫作業が終わってみれば案の定、登熟期の夜間の高温がたたり、さほど収量は上がらず、カメムシの被害ばかりが目立ち、見た目はあまり良いとは言えないが、食味は心配に反しまずまずの出来と言える。稲の作業が終わっても、畑の片付けや機械の清掃・点検整備、格納、ハウスのビニールの張替え、そして雪囲いと仕事は尽きない。





【 星 川 公 見 】

● 夏の猛暑で心配していた米の作柄も収量は少ないものの思っていたよりきれいな美味しい米ができたようでホッとしている。稲刈りも無地に終わって、秋を感じる余裕が出てくるが、疲れも出てくる。
天の恵みに感謝しながら稲刈りの後かたづけに精を出す。





【 遠藤 敏信 】

● 稲刈りを終えとにもかくにもホッとしている。新米を炊いてもらった。実にうまい。食欲の秋とはよくいったものだ。毎食一杯と決めているのがついつい余計に食べてしまう。ささやかな しあわせ感。実はこの文章、冒頭を除けば、昨10月の短信と全く同じ。

 それにしても、政治が良くない。いまや、昨年の政権交代での期待感は失せた。交代した意味が全くない、と思う。安焼酎で今夜も酔う。 




(有)新庄最上有機農業者協会  【 佐藤 あい子 】

● (有)協会だより

① ただ今、にんにくを1反歩植えつけています。その種代48万円 … 。

②昨年産の我が「なたね油」は、あと2本で完売。本年産は今月末完成の予定。

③はと麦と大豆、今月中には刈り取りが終わります。