2010年9月25日土曜日

さわのはな生産者からのメッセージ 2010年9月16日

無農薬・無化学肥料の「さわのはな」を作っているお百姓さんたちのメッセージです。
さわのはな生産者からのメッセージ 20109月16日




【 今田 多一 】

●例年なら8/25の東北の最後の夏祭り・新庄まつりが終わると道行く人の挨拶が「やはり涼しくなったなぁ」と交わすのであるが、新庄も今年はご多聞にもれず猛暑続きであった。ここ数日の雨でやっと秋らしくなってきた。

9/11の新聞で全農山形が今年の県産米の概算金を発表した。過去最低の9000円/1俵60kgだという。村の仲間はいつもの事ながら、農協・全農・卸業者などの中間マージンを下げないで生産者価格だけを下げると怒る。そして、農縁米の無農薬無化学肥料栽培米は手と時間がかかり、病虫害のリスクも大きく、面積の拡大はなかなか難しい。頭が痛い。





【 笹 輝美 】

●なんとも厳しい夏でした。新庄は一週間ほど前から朝晩が涼しく感じられるようになりましたが、日中は高めの気温が続いています。酷暑の中、稲はといえば日照が多いのでさぞと登熟が進むかと思いきや夜間気温が高いため、日中光合成が活発に行われてもせっかく稼いだ分を夜間の呼吸作用で多くを消費してしまうので思いのほか進まず、茎葉の疲ればかりが目立ってきました。品質や味にどう影響するのか気がかりです。

この夏のような誰も経験したことがない猛暑が人間の生活・営みの結果であることは誰しも認めているのに、エコを口にしながらも更なる便利さを求め産業界はエコとは程遠い商品を休むことなく作り続け市場競争に熾烈な戦いを展開し続け、私たちもそれが当然と思い込み、より便利さ、より安さを求め続けているのだからいい加減なものである。

いい加減さついでにこの暑さで少々狂った脳ミソでコストというものを考えてみた。産業界は効率化によるコスト引き下げを永遠の至上命題に掲げ活動しているのだが、そこで言われるようなコストとは言うまでもなく生産に要した物財費や労賃、研究開発のための費用等であるがこれはいかにも産業界の都合のよい考え方であるとも言うことができる。

地球が今ほど病んでいるのであれば生産及び生産されたものを利用する段階、そして作られた目的を果し得なくなって廃棄される段階でも自然環境に与えた負荷をゼロに回復させるための費用をコストに含めるべきものと思うのだがどうだろうか?そうでもしない限り人間の強欲と貪欲が地球を呑み込んでしまうように思えてならない。





【 星 川 公 見 】

●あの暑い夏がいつまで続くと思っていたら、いつの間にか鈴虫のなく音を聞きながら眠るようになっていた。長い夏だった。

今年は今までになく田んぼに水を入れた。暑いと自分たちが水を飲むように稲も水を欲しいだろうと思ったからだ。これから刈り取りの時期を迎えるが、すでに早生の稲を借り入れた人や新聞等ではいつになく米の品質が悪いらしい。猛暑の頃、質が悪くなるのではと感じていた。

農薬を使わない米は尚更かもしれないし、またその逆かもしれない。それだけ手を尽くしたからだ。

品質が悪くても美味しい米はたくさんある。美味しい米であって欲しい。





【 遠藤 敏信 】

●政権を担う民主党の代表選が決着。「雇用。雇用。雇用」と叫んだ方が再選された。市場原理主義の横行で、働き場を奪われ失職した国民が生きられるのか。

米の概算価格が提示された。大暴落といっていい。このままでは日本の農民は農業に見切りをつける日が近い。

16日、幼稚園の子どもたちとその保護者が稲刈りに来た。小雨が降る中での作業となったが、濡れと汚れを気にする親の心配をヨソに子どもらは歓声を上げていた。 


2010年9月18日土曜日

幻の米「さわのはな」生誕50周年

田中正治



新庄水田トラストでは”さわのはな”を栽培しています。
山形県尾花沢で50年前に生まれたもので、市場からはほぼ姿を消していますが、一部の農家が”おいしい”のでつくり続けていました。
少し粒は小さいのですが、胚芽が大きくしっかりしています。精米すると少し乳白色ぽくなるので、米の検査では、等外米になったりするので、市場向けには農家はつくらず、自家飯米として栽培していました。

新庄水田トラストは、10年前から、遺伝子組み換えNO!の田んぼを増やしていこう、在来種を拡大していこうという趣旨で、都市住民と農家が協力して”さわのはな”を栽培しています。
もっとも普段の栽培管理は農家に委託して、都市会員が農作業に参加するのは田の草取りです。
10年間、百数十名の都市会員と7名の農家の産消提携の運動です。

”さわのはな”は、梅雨に入っても食味が落ちないお米なので、年間にわたってトラスト会員がお米を受け取るのには適しているようです。普通、お米は梅雨に入ると食味がぐんと落ちますので。

モンサント社をはじめ、世界のアグリビジネスは、種(たね)を支配しようとしています。日本の野菜の種も気がつかない間に、ほとんどを輸入に頼ってしまっているのが現状です。
種子の自家採取の権利は、知らない間に狭められようとしています。種子会社の特許権(知的所有権)をたてに、農民が永代にわたって種子を採取してきた自家採取の権利が狭められようとしています。
自家採取こそ農業の根幹だといってよいでしょう。

在来種はその土地にあった品種ですので作りやすく、また気象条件にも適応能力があります。
日本中にまだまだ沢山の在来種が受け継がれています。でも、それが農家の自家消費にとどまるなら、栽培していた農家のおばあちゃんが亡くなられたらそれでおしまいになるでしょう。ですから、トラストや産直といった方法で、生産・流通・消費のサイクルを作る必要があるのです。

山形県・長井市のフォークソンググループ・影法師が、さわのはなにささげる歌を作曲しました。
タイトルは、「コメのコメ さわのはなに捧ぐ」
「50年前に 生まれた米が いまなお田んぼで きらめいている・・・」 「時代に合わぬと 捨てられた米が米の未来を 指し示している・・」

(写真は、フォークグループ・影法師)


世銀 グローバル農地投資の調査結果を公表
ランドラッシュは重大な社会・環境リスクを生む恐れ

農業情報研究所
2010年9月8日

 世界銀行が9月7日、グローバルなランドラッシュに関する最も包括的とされるサーベイの結果を発表した。その内容は、フィナンシャル・タイムズ紙が既にリークしていたことと基本的に変わらない(参照:外国農地投資 法弱体国に狙い 投機目的で安く買いたたく FT紙に漏れ出た世銀報告草案,10.7.28)が、報告書の全容の紹介は別の機会に譲り、取りあえず、そのメッセージの核心をなすと筆者が考えるところを紹介しておくことにする。



 http://siteresources.worldbank.org/INTARD/Resources/ESW_Sept7_final_final.pdf

 報告は、とりわけ食料価格高騰が引き金となって急増した途上国における大規模な土地取得(農地投資)は、適切に管理されなければ重大な社会的・環境的リスクを生むだろう、途上国は人々の資源に対する権利を認め、尊重せねばならない、多くの投資家を引き付ける途上国は弱者を土地取り上げから護る能力を欠いていると警告する。

 世銀のサーベイとはいえ、基本的情報源は、Grain(NGO)が大規模土地取得のグローバルなサーベイランスのために開設したブログ*に集められたメディアのリポートである。こうした情報には一定のバイアスがあるとしても、政府の公式記録と対比すると(投資)プロジェクトの進捗とともに事実に即したものになってくることがわかる。また、これは世界全体をカバーする唯一の情報源でもある。ということで、サーベイは、投資の性格を確認し、報告された投資者の意図に関する記述された証拠を提供し、このような投資のターゲットとしての国の魅力を増す要因の軽量経済学的評価を行うために、これらのメディアのリポートを使用したという。

 http://farmlandgrab.org/

 2008年10月1日から2009年8月31日までのこうした情報の分析から次のことが明らかになった。

 ・報告されたプロジェクトの数は全体で464、うち面積に関する情報を含むものは203で、これらの面積は全体で4,460万ヘクタールに達する。プロジェクトのターゲットとなる国は81ヵ国で、うち面積で約3分の2(3,200万ヘクタール)をカバーする48%の国のプロジェクトがサブサハラ・アフリカにかかわる。これに、800万ヘクタールの東・南アジア、430万ヘクタールのヨーロッパと中央アジア、320万ヘクタールのラテンアメリカが続く。プロジェクトの面積規模は「野心的」で平均4 万ヘクタール、20万ヘクタール以上が4分に1を占め、1万ヘクタール未満は 4分の1を占めるに過ぎない。(生産する)商品に関する情報を含むのは405のプロジェクトで、37%が食料作物、21%が工業用または換金作物、21%がバイオ燃料だった。残りは、保全・娯楽区域、牧畜、植林地。

 ・報告された意図とは対照的に、大部分のプロジェクトは土地を取得していないか、取得した土地を意図したように使っていない。30%は「探求」段階にあり(すなわち政府の承認を得ておらず)、18%は承認されたがスタートしておらず、30%が初期段階にあり、実際に農業を始めたのは21%にすぎず、この場合にも規模は意図したものよりずっと小さい。

 ・世界全体のプロジェクの23%がサブサハラ・アフリカのスーダン、エチオピア、ナイジェリア、ガーナ、モザンビークに集中している。ラテンアメリカ(主にブラジルとアルゼンチン)が21%、ヨーロッパと中央アジア(主にロシア、カザフスタン、ウクライナ)が11%、東南アジア(フィリピン、カンボジア、インドネシア、ラオス)が10%である。サブサハラ・アフリカとラテンアメリカでは、食料作物とともバイオ燃料に関するプロジェクトが多くなっている。

 ・投資国は限られている。中国、湾岸諸国(サウジアラビア、UAE、カタール、クウェート、バーレーン)、北アフリカ(リビア、エジプト)、ロシア、英国・米国等の先進国である。活動を開始したプロジェクトの比率は投資国により大きく異なり、リビア、インド、湾岸諸国、英国は意図と実施の間の差が特に大きい。

 ・最大のシェアを占める投資者はアグリビジネスと工業で、アグリビジネスは食料作物、工業はバイオ燃料に特化している。政府出資投資ファンド(SWF)が直接投資しているように見えない。中東や北アフリカのファンドは他の地域のファンドに比べて食料作物に特化しており、中東の土地需要が国内の食料需要に発するものであることを示唆している。

 ・投資家を引き付ける要因は森林ではなく、森林でない土地が豊かにあることである。一般的な外国直接投資と異なり、投資家を保護する法の支配や有利な投資環境は投資の計画や実施にほとんど影響を与えない。農村の土地保有権の承認はマイナスに影響する。つまり、土地への権利が弱いほど、投資者にとっての魅力は大きくなる。

  こうして、「投資者の関心が土地ガバナンスの弱い国に集中することは、投資者が、基本的には無償で、地方の権利を無視して土地を取得するリスクを増し、遠大な否定的結果につながる可能性がある」。

 他方、こうしたメディアのリポートを検証するために14ヵ国の政府からデータを集めてみた。こうしたデータが際立たせるのは次のことである。、

 ・政策が大規模な土地移転(リースと通じてであれ、販売を通じてであれ)の規模と性質に影響を与える。例えば、”村”に対して強固な土地への権利が与えられているタンザニアでは、2004年1月から2009年6月までの間に投資者に移転された土地は5万ヘクタールに達していないが、モザンビークでは同じ期間に270万ヘクタールが移転され、しかも、2009年の監査によるとその半分は利用されていないか、低利用の状態にあった。移転を受けた投資者の多数は、概ね国内投資者である(国内投資者が占める比率は、ナイジェリアで97%、スーダンで78%、カンボジアで70%となっていた。ただ、モザンビークでは53%、エチオピアでは49%、リベリアでは7%で、これらの国では外国投資者の役割も大きくなっている)。さらに、大部分のケースでで、予想される雇用創出と純投資のレベルは非常に低い。

 ・制度(公的機関)の能力と土地情報の管理が非常に弱体である。土地需要が最近増えた多くの国で、提案について十分な審査が行われず、なすべき注意もなくプロジェクトが承認され、責任が重複する諸機関が張り合い、秘密主義が横行している。そのために、ガバナンスの弱体化につながる環境が作り出されている。土地取得に関する公式記録は不完全で、社会的・環境的規範の無視が広がっている。これらすべてが、投資者を引き付けるための”どん底に突進するレース”の危険性を暗示している。地方住民との協議の欠如や不足、不明確な境界画定が土地保有の安全保障を損ない、投資意欲を減らし、紛争頻発の可能性を高め、公共部門が土地税を集め、投資者が地方住民との間で結んだ協定の順守状況の監視を難しくしている。

 同時に行われたケース・スタディでも、①土地ガバナンスの弱体と、地方コミュニティの土地への権利の承認、保護、(自主的移転の場合の)補償の欠如、② 大規模投資を進め、管理する国の能力(明確で執行可能な協定に結果する関係者全体が参加する包括的協議を含む)の欠如、③十分に練り上げられておらず、技術的に存続不能な、あるいは地方・国の開発ビジョンと矛盾し、ある場合には投資者の地域住民の土地の侵略にもつながる投資者の提案など、大規模投資をめぐる不安が広がっていることが確認された。

 それにもかかわらず、これらケーススタディは、大規模投資が、社会的インフラ支援、雇用創出、地方生産者に対する市場アクセスと技術の提供、地方と国の税収増加という4つのチャネルを通じて利益をもたらす可能性があることも示している、という。

 要するに、アフリカをはじめとする多くの途上国では、土地所有権が記録も、尊重もされておらず、投資の詳細は内密にされ、土地への権利に関する情報はデータベースに蓄積されておらず、権利を公式に認められていない先住民や小規模農民は土地協定から排除されている。だから、こうした人々がこうした大規模投資から利益を得るのは非常に難しい。それは、世銀や日本政府も推奨する「責任ある」投資家さえ遠ざける恐れがある。実際、スーダンの多くの農民は土地への権利を失ったが、移転された土地の少なからぬ部分が耕作されないままになっていると不平を言っているというように、投資者の関心は作物栽培するよりも、土地価格の上昇を当てにした投機にあるのではないかと疑われる例も多い。

 それにもかかわらず、世銀等国際社会は、大規模土地投資は有益と信じ、自主的な「行動原則」づくりにこだわり続ける。 その実施についてはいかなる成算もないままに。この問題にかかわる中部・東アフリカ諸国の市民・農民・遊牧民団体が国際社会に求めているのは、何よりも、外国投資活動を規制するための国際的規制のフレームワークである。その上に、企業は社会的にもっと責任ある投資を行うことを”自ら”決定するように説得されねばならない、投資国の国民は自分の金がどこにどのように投資されているか知らねばならない、企業はランドグラブ(土地収奪)の故に公然と辱められ、咎められねばならない(shoud be publicly shamed and blamed)と言う。

  東・中部アフリカにおけるランドグラビング(土地収奪) 現地市民・農民団体等による研究集会報告,10.9.2