2009年5月10日日曜日

米国に自然食品ブーム

田中正治


ジャンクフードの元祖アメリカで自然食品ブームが起こっているようですね。
昨年アメリカに留学していた友人からはなしには聞いていたのですが・・・。でっかいスーパーマーケット丸ごと有機食品というような店が随分増えているとのこと。
最も、ロハス志向の多い人たちの居住地域に多いようです。

まあ、朝昼晩とハンバーグを食べさせようとしているジャンクフード業界のコマーシャルによって超メタボ人間があふれている社会に対する細胞の反逆なのでしょうね・・・きっと。

日経エコノミーのホームページにレポートが出ていますが、アメリカらしく冷凍食品のオーガニックも結構ありそうですが・・・・。

「オーガニック食品の売上高は毎年約20%と、食品部門で最も成長している分野となり、 2008年の調査によると、「オーガニック食品を少なくともたまには購入する」米国人は69%を占めるという。」んですって。

>米国の自然食品ブームは本物か(日経エコノミー 09/05/01)


インフルエンザA型:農工業のインフルエンザ!―問われる農工業モデル―

インフルエンザに関してAttacフランスと農民連盟が出した声明(翻訳:Attac Japan星野さん)が出されています。問題の本質を突いた声明だと思います。(田中正治)
(以下、Attacフランス、農民連盟より転載)

原文:http://www.france.attac.org/spip.php?article9914



インフルエンザA型:農工業のインフルエンザ!
2009年5月6日
Attacフランス、農民連盟

問われる農工業モデル

インフルエンザA(H1N1)型という名称によって着手される取組みは、過熱する報道の中で、このウイルスの出現と拡大の真の原因を覆い隠すおそれがある。それにもかかわらず、しだいに多くのNGO、研究者、北米のジャーナリスト、そしてメキシコの住民の証言が、多国籍企業によって主導され、新自由主義的グローバリゼーションによってもたらされた農工業モデルを問題にしつつある。

ウイルスの正確な起源に関する確証はないが、ヒト型、鳥型、豚型の混合とされている。しかし、あらゆることから、ウイルスの伝播は農工業と深く結びついていると考えられる。何年も前から多くの科学者が、畜産の工業化や非常に集約的な畜産によってウイルスの伝播や再結合が助長されることを警告してきた[1]

重大な手がかりとして、豚肉の生産・加工で世界最大規模の多国籍企業、スミスフィールド・フーズ社が挙げられている。同社はメキシコのラ・グロリアという町にグランハス・キャロルという子会社を持っている。数カ月前から、住民は呼吸器官の病気や変死が発生していることを訴えてきたが、これらはすぐに、この多国籍企業の凄まじい衛生状態(たとえば、屋外に放置された豚の腐った死骸)と関連づけられた[2]。まさにこの地で、国内初の豚インフルエンザの事例が確認されたのだった。

メキシコ当局は明らかに問題をもみ消そうとした。それにもかかわらず、スミスフィールド・フーズ社はすでに、公衆衛生を危険にさらすその畜産慣行の犠牲者である住民によって告発されている。しかし、農産物加工に携わる他の多国籍企業の場合と同様に、当局の無能力や放任のおかげで、自由な投資の法則が幅を利かせることになったのである。

もうひとつの潜在的な発生地は、ノースカロライナ州で米国人研究者らによって特定される可能性がある。同州は、養豚業の集約化と工業化が国内で最も進んでいるからである[3]。また他の発生地が特定される可能性もある。

重要なのは、少数の多国籍企業の畜産の過度な工業化が公衆衛生にもたらす大きな危険を注視することである。このような工業化は、非常に多くの研究者や機関の警告にもかかわらずおこなわれてきた。この40年間で、米国の1畜産農場あたりの豚の平均数は50頭から1,000頭に増加した。スミスフィールド・フーズ社の畜産では、巨大な飼育場にそれぞれ数万ないし数十万頭の豚が集約的に閉じ込められる。そこは糞便の池と化しており、汚染をもたらす大量の排泄物と、耐性を高める抗生物質にまみれているのだ。農民や家族による牧畜とはまったくかけ離れているのである。

根本的な原因:自由貿易と多国籍企業による独占支配今回のインフルエンザが最初にメキシコと北米で特定されたことは、明らかに偶然ではない。1994年に米国、カナダ、メキシコの間で締結されたNAFTA(北米自由貿易協定)によって自由貿易圏が創設され、特に予防原則を無視して自由市場が定着したのである。保護される可能性を失ったメキシコの農業は、超低価格の大量の農作物によって壊滅させられたのだ。米国の農産物加工の多国籍企業は、米国で課される規制を逃れるためにメキシコに大量に投資し、大挙して根を下ろすことができた。

さらに、メキシコは1980年代以降、IMFと世界銀行の構造調整計画に従っていることも忘れてはならない。これらの計画は、とりわけ国内向けの食糧生産や家族農業を犠牲にして、農業を輸出志向にしむけるものである。その条件は、環境・社会・公衆衛生に関する規制のない、工業化され、汚染を引き起こすような農業へと向かう偏流をもたらすものであった。

また、このインフルエンザの拡大によって、防止システム、とりわけ世界保健機関のシステム、および北米の公衆衛生システムがうまく機能しないことも明らかになった。これらのシステムは民営化され、財源が乏しく、適切に調整された迅速な対応が取れないのである。さらに、南の国々は、ロッシュ社のタミフルと同様に不可欠な抗ウイルス剤をジェネリック薬品として公然と生産しようとしたが、製薬業界は、この動きを阻止するためにあらゆる手を尽くした[4]

鳥インフルエンザの場合と同様に、根本的な原因は自由貿易と多国籍企業による独占支配にある。緊急に、ウイルスの起源、特に北米における畜産の工業化と公衆衛生システムの破綻がもたらす影響について独自に評価をおこなう必要がある。これは容易なことではないだろう。鳥インフルエンザの場合と同様に、養豚業界は、あらゆる手段を使って調査を妨げる可能性が高いからである。

より長期的には、農工業モデルおよびそれをもたらした自由貿易協定と市場の自由化を再び問題にしなければならない。世界貿易は、食糧主権そして各人が自らの農業を特に多国籍企業から守る権利において、連帯的かつ協調的なものとならなければならない[5]。さもなければ、公衆衛生に関わるさらに甚大な惨事を覚悟しなければならない。

Attacフランス
農民連盟

2009年5月6日

原注

[1]NGO「Grain」のウェブサイトを参照(http://www.grain.org/article/?id=50);Bernice Wuethrich、「気まぐれな豚インフルエンザの追跡」、『サイエンス』誌、2003年第299巻;「専門家パネルは工業的畜産が公衆衛生に及ぼす深刻な脅威を強調」も参照。これは、2008年11月に議会においてなされた、集約的養豚がもたらす衛生上の大きな危険に関する専門家パネルの警鐘に言及している(http://www.pewtrust.org/news_room)。

[2]特にメキシコの日刊紙『ラ・ホルナダ』による。この地域では鶏の集約的・工業的な畜産も多数おこなわれており、最近、鳥インフルエンザが猛威をふるった。ウイルスの再結合の発生源という可能性もある。

[3]「米国動物愛護協会」の公衆衛生・畜産局長Michael Gregerの論文(http://sheepdrove.wordpress.com/200)。同様に、2004年の「フランス獣医学会会報」には次のように述べられている。「2000年代初頭から、フランスにおける豚のインフルエンザは、第一に、豚の密度がもっとも高いブルターニュ地方の畜産と関係している。これは同地域の畜産に大きな経済的影響を与えている。このインフルエンザの活動は、鳥起源(A/H1N1)または遺伝子再集合体(A/H1N2)のA/H型ウイルスの仕業である。インフルエンザウイルスは不安定なため、疫学的監視を有効におこなうためには検出手段を定期的に調整する必要がある。」

[4]http://www.guardian.co.uk/comments

[5]このテーマに関して、Attacヨーロッパ/ビア・カンペシーナ・ヨーロッパ共編『食糧主権:欧州は何をしているか?』(Paris, Syllepse,2009)が近刊予定である。


2009年5月3日日曜日

OIE 現在広がる豚インフルエンザの”北米インフルエンザ”への改名を提案

農業情報研究所(WAPIC)
09.4.29


 国際獣疫事務局(OIE)が28日、メキシコと米国に発して現在世界中に広がりつつあるインフルエンザを”豚インフルエンザ”と呼ぶのは不正確とし、”北米インフルエンザ”と呼ぶべきと提案した。



 OIE position on safety of international trade of pigs and products of pig origin(OIE Press Release),09.4.28
  http://www.oie.int/eng/press/en_090428.htm


 貿易最優先のOIEらしく、豚インフルエンザの呼び名が豚と豚由来製品の貿易に悪影響を及ぼすことを恐れたのが何よりの動機だが、現在広がっているウィルスは、人間・鳥・豚起源の遺伝的コンポーネントを含むもので注1)、”豚インフルエンザ”と呼ぶのは不正確、過去に起きたアジアのインフルエンザ、スペインのインフルエンザの発生のときに使用されたのと同様な命名法にならい、”北米インフルエンザ”と呼ぶことを提案する。


 そして、現在までに利用できる情報では、現在米国とメキシコで起きているインフルエンザの発生に先立つ豚インフルエンザの発生はなかった。人間の感染者が発見された地域内で感染動物が確認されていないのだから注2)、豚や豚製品の国際貿易措置を導入する必要はないし注3)、豚肉製品の消費者に感染リスクがあると考えることもないという。  




 人間と豚と鳥のインフルエンザウィルスを世界のすべての場所から寄せ集めた複雑怪奇な新型ウィルス、巨大養豚・養鶏工場が集積する北米でなければこのようなウィルスは誕生しなかったかもしれない。その意味では、確かに北米インフルエンザの名がふさわしい。(タイは既にメキシコインフルエンザと呼んでいるそうである)


 Swine flu: Is intensive farming to blame?,Guardian,4.28
 http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/apr/28/swine-flu-intensive-farming-caroline-lucas


  ただし、それが豚の監視の軽視につながるようなことがあってはならない。豚への感染は、鳥インフルエンザが人間から人間に移る型、つまり新型インフルエンザに変身するための最も有力な経路をなす。現に、神戸大学感染症センターは、インドネシアの4州で調査した402頭の豚のなかの1割を超える52頭の豚からH5N1鳥インフルエンザウィルスを検出した。52頭の豚から検出されたH5N1ウイルスを詳しく調べると、人への感染力を一部獲得したタイプが1株見つかったという。


 インドネシア豚から鳥インフル、体内で変化「新型」の恐れ YOMIURI ONLINE  4.29
  
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090429-OYT1T00073.htm


   強毒で知られるH5N1鳥インフルエンザの新型インフルエンザへの変身も近いのかもしれない。豚の監視は一層強める必要がある。 


 注1)このウィルスは、1998年に初めて同定された人間・豚・鳥インフルエンザウィルスを寄せ集めた既存のウィルスがユーラシアからの新たな二つのH3N2豚ウィルス遺伝子―それら自体は最近の人間起源―と結合した豚H1N1株という。


 Swine flu outbreak sweeps the globe,Nature News,4.27

 http://www.nature.com/news/2009/090427/full/news.2009.408.html


 注2)3000村民の6割が感染、2月以来死者も出ているメキシコ南東部・ベラクルス州ラグロリア村村民がこのインフルエンザの発生源ではないかと疑う養豚工場を関連会社に持つ世界最大の養豚・豚肉加工企業・スミスフィールドは、メキシコのジョイントベンチャーの豚や労働者に豚インフルエンザの症候は見られなかったと発表している。


 Smithfield Foods Says It Found No Evidence of Swine Influenza at Its Mexican
Joint Ventures,09.4.26
 http://investors.smithfieldfoods.com/releasedetail.cfm?ReleaseID=379761

 なお当該村民に関する情報は、
 Four-year-old could hold key in search for source of swine flu
outbreak,Guardian,4.28
 http://www.guardian.co.uk/world/2009/apr/27/swine-flu-search-outbreak-source

 Mexico outbreak traced to 'manure lagoons' at pig farm,Times,4.28

 
http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/health/article6182789.ece


 注3)中国、ロシア、ウクライナは、メキシコ、米国の一部からの豚肉輸入を禁止した。