2008年9月27日土曜日

米国食品企業20社 クローン動物を拒否 避けがたいその子の利用



 米国の”食品安全センター”と”地球の友”が9月3日、20の主要食品メーカー・小売業者が食品にクローン動物を使わないと述べたと発表した。このようなクローン動物由来食品の拒絶は、これら製品の市場はないという強力なメッセージをバイテク企業に送る、アメリカの消費者はクローン動物やその子に由来する食品を食べることを望んでおらず、これら企業はこの新たな、試されていない技術に大きな市場が開かれることはないだろうと予期しているという。

 食品安全センターの調査に対し、General
Millsは、クローン動物由来成分を製品に使うかどうかは、”消費者の受け入れ”が重要なカギになると答えている。クラフトフーズも似たような立場で、安全性だけはなく、消費者の利益や受け入れなども慎重に考慮せねばならず、米国での調査は、今のところ、消費者はクローン動物由来の成分の使用を受け入れないことを示していると言う。



 食品安全センターは、08年5月に、肉と乳製品の生産・利用・販売にかかわる企業を対象に、クローン動物使用に関する立場の調査を始めた。食品メーカーの売り上げトップ3社が、クローン動物由来の成分は使わないと答えた。別の9社は、クローン動物だけでなく、その子に由来する成分も使わないと述べている。



 他方、クローン動物とその子の使用に関する政策決定でトップ食料雑貨商と協同している地球の友に対しては、今までのところ、7業者がクローン動物由来の製品は売らないと伝えてきた。 


 20 Leading Food Companies and Retailers Reject
Ingredients from Cloned Animals in Their Products,The Center for Food
Safety,08.9.3

 http://www.centerforfoodsafety.org/CloningPR9_3_08.cfm




 ただ、表示もないなかで、このような約束は守ろうにも守れない場合があるだろう。クローン動物自体は未だ市場に出ることは少ないだろうが、その子はどうしたら排除できるのだろうか。実際、クラフトフーズ、ウォルマート、タイソンフーズを初め、多くの企業がクローン動物は使わないとしているが、その子由来の食品を使わないとは約束していない。


 クローン動物の子の乳や肉は、既に米国市場に出回っている。クローン動物の数は増えつつあり、その子のすべてを追跡することは誰もできない。アイオワ・ジェファーソンの一農場所有者は、過去”幾年”(several
years
)も、クローン動物の子を食料用と畜に送ってきた、現在、50頭から100頭のクローン動物の子を育てているという。



 Animal Clones' Offspring Are in Food Supply,The Wall
Street Journal,9.2

 http://online.wsj.com/article/SB122031044800588585.html?mod=googlenews_wsj


 クローン動物の子は使いたくなくても、避ける方法がない。



2008年9月24日水曜日

鴨川での稲刈り

石川美佐代(新庄水田トラスト会員)


6月の山形新庄・ネットワーク農縁での草取り、今回の千葉鴨川・遊学の森での稲刈り、どちらもとても楽しかったです。
精神的な豊かさを味わうことが出来ました。

新しい扉が開かれたような、何かにスイッチが入ったような不思議な感覚で、ドンドン興味が湧いていきます。次は、やはり田植え。

大の苦手だった虫さんたち、田んぼでは自然に受け入れることが出来、安全だからここで暮らしているんだと思えました。心身ともに、すばらしい時間をすごすことが出来ました。

東京に戻ってからの慌しい一週間の間に、「現代農業」という雑誌を申し込み、JAビル他で開催された「ふるさと回帰フェアー」という催しに足を運びました。この行動力に自分自身が一番驚いています。
この出会いを無駄にしないように、身近でできることから、始めたいと思います。




2008年9月17日水曜日

2008年9月10日水曜日

ライスロンダリング アフラトキシン汚染米はどこに


9月5日に農水省は、三笠フーズによるアフラトキシンやメタミドホスに汚染された“事故米”のライスロンダリング=食用転用を公表したが、その全容は、未だに明らかになっていない。

一番問題は、アフラトキシンB1に汚染された“事故米”がどこに流れたかという点である。アフラトキシンは自然界最強の発がん物質といわれ、その毒性はダイオキシンの10倍ともいわれる。その中でもB1が最も毒性が強いという。アフラトキシンは、遺伝子の突然変異を起こしやすい遺伝毒性発がん性物質であることから摂取量を可能な限り低くすることが求められ、摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される摂取量である耐容摂取量は設定されていない(食品安全委員会)。

・食品安全委員会
http://www.fsc.go.jp/emerg/af.pdf

5日の発表当初、毎日新聞などによればアフラトキシン汚染米約9.5トンの一部、2004年度に三笠フーズに売却されたベトナム産汚染米約3トンが焼酎メーカー3社に流れたという。8日のには、アフラトキシン汚染米の一部が外国産の正規米に混入され販売されたという

【カビ(アフラトキシンB1)汚染米】農水省,9月5日発表より作成
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2006年度売却分           Kg
アメリカうるち精米(0.01ppm) 390.0 アメリカ加州精米中粒種
中国うるち精米  (0.05ppm) 5,768.2 中国うるち精米長粒種15%
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2004年度売却分
ベトナムうるち精米(0.02ppm) 3,367.4 ヘ゛トナムうるち精米長粒種15%
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計9,525.6Kg

・農水省, 2008-9-5
「三笠フーズ株式会社に売却した非食用事故米穀」(PDF)

・農水省, 2008-9-9
(別紙1)三笠フーズによる事故米穀横流しの流通経路(PDF:15KB)

・毎日新聞, 2008-9-6
「事故米:食用に転売…一部にメタミドホス 大阪の卸業者」

・毎日新聞, 2008-9-8
「事故米食用転売:正規米と混ぜ販売--三笠フーズ」


週明けより農水省は、三笠フーズより流れた汚染米を使ったメーカーのうち公表に同意した企業についてのみ実名を明らかにした。その製品が食品として流通しても、同意していない企業名は公表されないというのは消費者無視の姿勢に他ならない。大田農水大臣は9月9日の記者会見において、この点を質問されて次のように答えている。
「それは安全性についての見方があると思います。非常に危険性が高いということであれば、直ちに公表して回収を急ぐということだろうと思います。安全性(の問題)が低い場合には、結局は公表すべきでありますから、今時点で公表しているわけでありますけれども、バランスを考えるということだと思います。」

・農水省, 2008-9-9
「太田農林水産大臣記者会見概要」

自然界最強の遺伝毒性発がん性物質であるアフラトキシンB1が混入したコメの流通を三笠フーズが認めている以上、どこに、どれだけ流れ、どのような状況であるかを早急に明らかにする必要がある。大田農水大臣の発言を見ると、アフラトキシンの混入はさしたる危険ではない、という立場に立っているということだけははっきりしている。どれが安全であるか分からなければ、消費者は危ないと疑わしきものを避けるしか身を守る方法はない。農水省が同意を条件に公表を渋る以上、“風評被害”が当然のものとして起きるだろう。そもそも、農水省の杜撰な管理が招いた今回のライスロンダリング・スキャンダルは、単に違約金を取るというレベルの問題ではない。消費者の健康の問題なのだ。

もう一つの問題は、今回の汚染米が全量ミニマムアクセス米(MA米)であるという点である。WTO(世界貿易機関)の推し進める自由貿易体制が招いた問題なのだ。食の安全を言いながら、食料の海外依存率が60%の現在、輸入食料に依存する日本の食が、実は安心できないものかを如実に示しているといえるだろう。

このミニマムアクセス米は、年間77万トンの輸入が義務付けられているが。ライスロンダリングが明らかになった5日、2007年度の輸入量が70万トンしか確保できなかったことが明らかになっている。世界的な食糧危機が明らかになり、ベトナムなどのコメの輸出国が禁輸に踏み切る中、日本がミニマムアクセスを根拠にして高値でコメを買いあさることが、食料危機にあえぐ国々をより厳しい状況に追い込むことは明らかである。ここにも無理を押し通すWTOの不条理が現れている。

・毎日新聞, 2008-9-5
「コメ:最低輸入義務達成できず 07年度分枠」


2008年9月8日月曜日

2008年9月25日締切、北海道GM規制条例に関するパブコメ(転載)

GMO問題に取り組んでいる全国のみな様

市民ネットワーク北海道・食プロジェクト 富塚とも子

みなさんのご尽力で、成立した「北海道食の安全安心条例」と「北海道遺伝子組換え作物の栽培等による交雑等の防止に関する条例」ですが、来年の4月で見直し期限である3年目を迎えます。

北海道は、見直しに向けて9月25日を期限としたパブリックコメントを募集しています。なお、条例についての状況ですが、GMO推進派は、見直しに向けて着々と布石を打ってきています。北海道は、条例制定の旗振り役であった麻田副知事が退職され、高橋はるみ知事は経済産業省寄りといわれています。予断を許さない状況です。

応募資格に北海道在住などの限定はありません。個人名での、パブリックコメントをたくさん寄せていただくことで、日本で最も進んでいるといわれるGM規制条例の維持にご協力ください。なお、団体の方は、団体名でも道への申し入れ書を出しくださるようお願いします。9月25日までの提出をお願いいたします。


論点ですが、

1.距離によらない交雑防止策について。農業試験場の実験の結果、距離による交雑防止は不可能とということがわかり、他の交雑防止法を探るとのことになっていますが、、実験結果に安全率2~3を掛けた上で距離要件として生かし、さらに他の交雑防止策を併用すべきです。

2.コンセンサス会議や対話集会については、推進側の研究者がファシリテーターを務めるため、公正な話し合いができていません。ファシリテーターについても、公正な人選が必要です。

3.研究機関による栽培要件の緩和が提案されることと思います。これについては、閉鎖された実験室での実験として封じ込めることが必要です。さらに、現在は大学の研究室で行われている実験の安全性について管理の徹底を強く要望する方法もあると思われます。

日本中から、世界からのパブコメ、申し入れ書をよろしくお願いします。ただし、言語は日本語のみとの条件が付いていますのでお気を付け下さい。

4.商用栽培については、ぜったに許さないことを、あらためて主張することが大切です。推進側は、ここに焦点を絞ってくるかもしれません。

5.バイオエタノール用のGMOの栽培も焦点の一つになることと思います。

ほかにも、GM規制条例のあらゆる部分について、緩和を許さないことが必要だと思います。


パブコメの詳細については以下のアドレスを参照ください。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/shs/shokuan/shoku-jourei.htm

GM条例に関係する交雑試験の結果等については、以下のアドレスを参照ください。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/shs/shokuan/shoku-iinkai.htm

これ以外に、北海道が関わっているGM推進派との動きにつてもチェックしていただければと思います。
ひとつは、北海道が主催した、コンセンサス会議です。

詳細は、以下の文言でネット検索してください。

2007年2月4日
北海道における遺伝子組換え作物の栽培についての道民の意見

~「コンセンサス会議」からの市民提案~

遺伝子組換え作物について道民が考える

「コンセンサス会議」

また、北海道大学のバイオ研究者が中心となって開催したGMOをテーマとした集会が08年8月に開かれました。

この中で、2つの提言がなされたとのことですが、

ひとつは「遺伝子組み換え食品の表示の徹底」ひとつは「GMOの研究の促進」だったということです。

参加者によれば、表示の徹底については納得がいくが、研究の促進については合意した覚えがないとのことでした。

議事録等はまだ、アップされていませんが、後援した北海道農政部の食の安全推進室の話によれば、近じかアップされる予定だそうです。

枠組みは、以下のサイトで見てください。

http://www.agr.hokudai.ac.jp/gmtaiwa

なお、「社会運動」にこの夏掲載された原稿が、現在の状況や課題を説明していますので、貼り付けます。参照ください。

意見書、パブコメへのコピー・ペーストに使っていただいても構いません。



「北海道遺伝子組換え作物の栽培等による交雑等の防止に関する条例」の近況

~交雑試験において隔離距離600メートルでイネの交雑を確認~

遺伝子組み換えイネいらないネットワーク 富塚とも子

「北海道遺伝子組換え作物の栽培等による交雑等の防止に関する条例」(以下北海道GM規制条例)施行から2年半、罰則規定を盛り込んだ日本で初めてのGM規制条例として期待される反面、GM作物栽培抑止効果がどれほどあるのかといった不安もありましたが、施行以来、道内では開放系一般栽培も、開放系試験栽培も行われていません。

北海道は、道内の生産者や試験研究機関を対象に、開放系での遺伝子組換え作物の栽培計画について毎年調査を実施し、2月初めに翌年度の情報を公開しています。

2008年度も道内においてGM作物を開放系で栽培する計画は、一般栽培はもちろん研究機関による試験栽培もないとのことです。開放系での栽培は栽培しようとする90日以前に北海道に申請か届け出が必要とされており、北海道は新たな栽培情報が入りしだいホームページで公表するとしています。情報の公開が約束されたことは、条例が市民にもたらした大きな利益のひとつだと思います。       

また、全国的に展開されているGMフリーゾーン運動についても、北海道の登録農地は4万3751ヘクタールと、日本全国のGMフリーゾーンの約87%に達しました。

生活クラブ北海道等の尽力もありますが、GM規制条例制定をめぐって、日本全国の消費者から寄せられた「北海道での遺伝子組み換え作物の栽培はやめてほしい」という大きな声が、行政や流通、そして生産者のGM作物に対する姿勢を大変慎重なものさせたことがこの成果をもたらしたとも言えるでしょう。

食糧問題、エネルギー問題などGMをめぐる状況は常に変化し、いつどのような形で顕在化するか油断できない状況ではありますが、5年前には予想もできなかった成果を手にすることができたと感じています。

いまから5年前、2003年5月20日、生活クラブの組合員や市民ネットワーク北海道の代理人、自然食料品店の関係者、有機農業の生産者など札幌圏でGM食品反対運動にかかわっている市民およそ70人が、札幌市豊平区羊ヶ丘にある独立行政法人・農業技術研究機構北海道農業研究センター(以下北農研センター)の会議室に駆けつけました。

「5月の下旬に、遺伝子組み換えイネの開放系圃場での栽培実験のための田植えを行うが、その説明会が明日だというチラシを豊平区役所で見つけた」との情報がある市民によって各関係団体に伝えられたのでした。

まさに、寝耳に水!まさかという思いで駆けつけ、バイオハザードや情報公開の在り方について真剣に尋ねる参加者に対し、北農研センター側の説明員として登場した田部井豊氏は、「心配ない、安全だ」を繰り返すだけで、時間切れを理由に説明会を打ち切ったのでした。

納得できない私たちは、その場でこの問題に取り組むための有志による市民連絡会を立ち上げました。これが「北海道遺伝子組み換えイネいらないネットワーク」(以下北海道GMイネいらないネット)です。この日から、北農研センターへのさまざまな働きかけ
を始めました。

5月23日には、「GMイネの栽培試験の中止を求める申し入れ」を行い、さらなる対話の場を求めました。5月29日に再度説明会が行われましたが、話は噛み合わず、北農研センター側の「住民合意がなくとも田植えを行う!」との一方的な宣言によって打ち切られ、翌日田植えが強行されたのでした。

市民の意見を軽視した横暴なやり方に、「北海道GMイネいらないネット」は、できることはすべてやると決心しました。生活クラブでは、組合員に対し「2,3人程度のグループで北農研センターの見学を行い、市民の不安を伝えること」を呼び掛けました。

多くのグループが、三々五々北農研センターを訪れ、職員の認識を変えていったことは想像に難くありません。マスコミへの働きかけ、市民による圃場の監視活動など、私たちは怒りや不安を見える形で表現しました。

北海道新聞や地元のテレビ局がこの騒動を何度も取り上げたことで、これまで、一部の消費者しか知らなかった「遺伝子組み換え食品・作物」の問題点が広く世間に知られることとなりました。研究者や行政にとって、これほど多くの市民が「遺伝子組み換え食品・作物」を拒否することは全く予想外だったでしょう。さらに私たちを力づけてくれたのが、日本全国でGM問題に取り組む皆さんの支援でした。

7月5日に札幌で行われたパーシー・シュマイザーさんの講演会は、全国の運動体等の努力で実現したものですが、これまで、食品だけだと思われていたGM問題を、「種子汚染や環境破壊をもたらし、基幹産業である農業へ壊滅的なダメージを与える」ものでもあると訴える、まさにタイムリーな企画でした。

北農研センターのGMイネ問題もイネの成長とともに新たな不安となってマスコミに登場し、私たちは繁華街での街宣によって集めた署名を持って、北農研センターに実験中止の申し入れを行うなどのパフォーマンスを続けました。

そして北海道庁も大きく動きます。7月、道議会において「食」に関する条例の制定について検討を進めていく旨を知事が答弁。9月、道庁内に条例検討チームを設置。

10月には、第1回北海道の安全・安心な食を考える会が開催され、12月には、道議会において、「食」に関する条例の中で道内における開放系での遺伝子組み換え作物の栽培を規制する旨を当時農政部長だった麻田信二さんが答弁し、道議会も歩調を合わせるように「遺伝子組みかえ作物の非承認と遺伝子組みかえ食品の表示義務化を求める意見書」を国に提出したのです。

北海道GM規制条例の制定は麻田さんをはじめとする北海道農政部の職員の力によるところが大きいのですが、私たち一人ひとりの市民が全国で展開した反GM運動がなければ、農政部もこのような結果を出せなかったでしょう。

このあと、2005年の3月31日の北海道GM規制条例の交付まで、経済界を始めとするGM推進派の強力な巻き返しが起こり、道議会でのロビー活動や農政部への高圧的な働きかけが次々と行われました。

結果、遺伝子組み換え技術は有用であるとの文言が盛り込まれ、試験研究機関による開放系での栽培実験は知事による許可制ではなく届け出制になるなど、一部内容の後退もありました。

これに対して、「北海道GMイネいらないネット」は、2004年2月13日、全国各地からおよそ100名の参加者を迎えて「遺伝子組み換えイネはいらない活動報告集会」を行い、集会終了後、全国各地から北海道知事あてに寄せられた32万2408筆の署名簿を携えて北海道庁を訪問しました。

対応した、麻田信二農政部長に、条例への大きな期待と支持を表明し署名を手渡しましたが、これが条例内容の後退を阻止する大きな力となりました。一方、条例案の議会提出をまじかに控えた04年10月、推進派の研究者やモンサント社と関係の深い長沼の農業生産者によるGMダイズの栽培宣言が派手にぶちあげられ、抗議する私たちの行動とともにマスコミをにぎわせました。

当時は、大変だ!との思いで関係機関への申し入れ等に奔走しましたが、結果的にはこの騒動が消費者のGM作物に対する不信や不安感を高め、行政や農協はGM作物に慎重な姿勢を示さざるを得なくなったことで、GMダイズ栽培は撤回されるとともに条例制定への大きな流れができていきました。

いま北海道は、GM防止条例で示した交雑防止措置基準の検証、見直しのために必要なデータを蓄積することを目的とした交雑実験を行っています。


GM防止条例で定める隔離距離などの交雑混入防止措置基準案の結論を2005年8月の第4回部会で求められた専門家委員会「遺伝子組換え作物交雑防止部会」が、非GM作物による公的機関での交雑試験の実施を北海道に求めたのです。

「遺伝子組換え作物交雑防止部会」のメンバーは北大、帯広畜産大学、東海大学の研究者6名で、GM作物については慎重派、推進派、などスタンスの違いはありますが、「花粉の飛散距離に関するデータがあまりにも乏しすぎる。

また、冷害など特異な環境での花粉飛散は経験的には普通よりも広がる可能性が高いと考えられるが、十分なデータがない中で交雑防止距離定めるにあたって科学的な結論を出すのは難しい」との認識は一致していました。

道側が交雑混入防止の定義は、交雑率0%であることを明言し、部会に交雑率を0%にしうる隔離距離を科学的な知見によって決定・提案することを求めたため、「遺伝子組換え作物交雑防止部会」は交雑混入防止措置基準設定に苦しみ、「農水省の栽培実験指針は、比較的小規模な試験栽培についての全国的な基準であることから、安全率として3倍を乗じる。

道内の知見がある場合には安全率として2倍を乗じる。虫媒や風媒の作物については、安全率を乗じたとしても交雑防止が難しく、隔離距離による交雑防止のほかにネットを設置するなどの措置を併せて実施するが、隔離距離だけではなく、開花時期をずらすなど、二重・三重の対策を実施する」ことで決着させました。

その代わり、交雑防止措置基準で隔離距離を定めた5つの作物、イネ、ダイズ、トウモロコシ、ナタネ、テンサイの交雑試験を提言し、その結果によって交雑防止措置基準の改定を行うとしました。

実験は、条例施行から3年後(09年1月1日)の条例見直しに合わせて、06年度から08年度までの3年間、北海道立中央(長沼)・十勝・北見農業試験場、同畜産試験場、同花・野菜技術センター、東京農業大学生物産業学部で行われます。現在、06年度と07年度の結果が出ていますので作物ごとにまとめて報告します。

1.イネ 07度は600m 以上の距離で交雑を確認

試験実施機関
2006年度
2007年度

交雑防止措置基準の隔離距離等
備考

中央農試(岩見沢市)
花粉親と種子親との距離等
交雑率
花粉親と種子親との距離等
交雑率

2007年度のデータは冷水処理した区のもの
2m
26m
150m
300m
1.136%
0.529%
0.068%
0.024%
150m
300m
450m
600m
0.076%
0.023%
0.006%
0.028%
300m以上

2週間以上開花期の差がある場合は52m

07年度は、花粉源の「ななつぼし」以外に「きらら397」との交雑粒が150m 区、450m区、600m区で確認されました。これらの交雑は、花粉源「ななつぼし」圃場の南側420m に2.9haの「きらら397」圃場及び種子親600m 区の北北西452m 地点の「きらら397」圃場から飛散した花粉によるものと思われます。

150m 及び450m 区までの両圃場からの最短距離はそれぞれ560m、645m です。600m 以上の距離で交雑が確認されました。低温の影響により交雑率が高くなったと考えられますが、道は、冷害年においては、この程度の差は実際に起こりえるとの考えを表明しています。


ダイズ 虫媒によると思われる交雑が220mでみられました

試験実施機関
2006年度
2007年度
交雑防止措置基準の隔離距離等
備考

花粉親と種子親との距離等
交雑率
花粉親と種子親との距離等
交雑率
07年度は、40m以上では交雑は確認されなかった。中央農試で花粉親以外との交雑を確認(最短距離60~110m)

中央農試
十勝農試
北見農試
10m
20m
10m
20m
10m
0.004%
0.003%
0.066%
0.032%
0.008%
10m
20m
40m
80m
160m
230m
0.003%
0.003%





20m以上

上記の表では、花粉親との交雑のみが対象となっているため、06年度07年度を通じて40m以上での交雑は起こっていないかのようですが、06年度は、十勝農試すべての試験区で花粉親「スズマル」以外との交雑が認められ、可能性のある大豆個体または試験区は約220mの距離にありました。

風向とキセニア発生区との関係が認められない
ことから、風媒ではなく、虫媒がキセニアの発生要因として推測されています。中央農試、北見農試でも、花粉親以外との交雑が虫媒によって70mで起きたと推測されました。

07年度、40m以上での交雑が発生しなかった要因として、約200mの距離にあるナタネ試験圃場(5a)が、大豆開花始めより早い7月上旬から、大豆開花終期の8月中旬まで開花期間を迎えており、訪花性昆虫がナタネに集まった可能性が考えらます。

トウモロコシ
花粉親「キャンベラ90」との交雑は、250m 地点では0.015 %、600m 地点では0.003 %認められましたが、1200m 地点では認められませんでした。しかし「キャンベラ90」以外との交雑と考えられる粒が認められました。近隣のトウモロコシの調査や、交雑したと思われる最短距離についての調査は発表されていません。GM規制条例に基づく交雑防止措置基準の隔離距離は1200mです。

このほか、ダイズとナタネについての訪花性昆虫の調査が行われ、花粉媒介への関与の可能性が高いと思われる昆虫の特定を行いました。テンサイについては08年度の本格的交雑試験の材料が用意されたところです。

07年度の交雑試験の結果は、「遺伝子組換え作物交雑防止部会」でも検討済みですが、距離要件だけでは交雑は防げないとの声があがり、GM推進派委員からは交雑率を少しならいいことにすべきであるとか、交雑率0・003%などは0と考えていいのではないかとの意見が出され、なんだかキナ臭くなってきました。

幸い他の委員から、決して無視しうる数字ではないとの意見が出され、交雑防止の概念は0%のままでキープされていますが、条例見直しの内容については、条例の趣旨が曲げられないよう注意深く見守る必要があります。

さて、改めて交雑試験の結果をみれば、北海道GM規制条例の隔離距離は不十分だったと言わざるを得ません。さらに、国の隔離距離では交雑を防げないことが明らかにな
りました。

温暖化で気候が不安定になっている昨今、冷涼な北海道ならではの特殊な結果であるとすることも妥当とは思えませ。公的試験研究機関が発表したこの数字を、全国のGM作物の開放系での試験栽培に対する異議申し立てのために活用したいと思います。

また今回、北海道GM規制条例の制定過程を振り返り、消費者のGM作物・食品に対する「嫌悪感や不安感」が行政や生産者などの団体を動かす大きな力になっていることを強く感じました。GM条例の実行性は、この消費者の気持ちによって担保されていると言えば、今更といわれそうですが、偽らざる実感です。GMフリーゾーン運動等を通し、GM作物の問題点を社会に向けて訴えていく不断の努力が必要です。

最後に、2つの懸念を報告して稿を締めたいと思います。

ひとつは、高橋知事が道立農業試験場の独立行政法人化を進めていることです。独立行政法人化されれば、市民によるコントロールが及ばなくなるでしょう。お金のために、国やGM企業からの研究依頼を受けざるを得なくなるのは明白です。独立行政法人化を阻止するために行動を起こすべきです。

もう一つは、内閣府食品安全委員会と北海道が主催する食品の安全性に関するリスクコミュニケーター育成講座や、北海道が主催する「遺伝子組み換え作物コンセンサス会議」についての懸念です。前者は、GM推進側の視点でリスクコミュニケーターの育成がはかられ、後者は結論に重大な影響を与えるファシリテーターをGM推進側の研究者が務めています。今後の動向を注意深く見守りたいと思います。

2008年9月5日金曜日

米国控訴裁判所 除草剤耐性GMアルファルファの栽培禁止を支持

 米国の非政府組織・食品安全センターの報道発表によると、9月2日に手渡された決定で、米国第9巡回区控訴裁判所が除草剤耐性遺伝子組み換え(GM)ラウンドアップ・レディーアルファルファの栽培の、完全な環境影響評価書が出るまでの禁止を確認した。

 これは、米国農務省(USDA)がラウンドアップ・レディーアルファルファによる通常のアルファルファや有機アルファルファの汚染の問題に十分に取り組んでいないとした07年5月の連邦地裁の判決(米連邦地裁 除草剤耐性GMアルファルファ商業栽培を禁止,07.5.7)を改めて確認するものである。 第9巡回区控訴裁判所は、GMアルファルファの栽培が、有機及び通常品種に対する取り返すことができないかもしれない損害、環境に対する損害、そして農業者に対する経済的損害をもたらす可能性があると裁定したということである。

FEDERAL COURT UPHOLDS BAN ON GENETICALLY-ENGINEERED ALFALFA, The Center for Food
Safety,08.9.2

http://www.centerforfoodsafety.org/AlfalfaPR9_2_08.cfm

 この報道発表によると、食品安全センターほか8つの農業団体、環境団体などを原告とするこの訴訟で訴えられたのはUSDAだが、モンサント社やForage

Genetics社も被告人擁護者としてこの訴訟に参加した。

 メアリー・M・シュレーダー判事は、モンサントとForage Geneticsは連邦地裁がその金銭的損害を無視したと主張したが、連邦地裁はこれらの経済的損害も考慮しており、非GMアルファルファを望む生産者と消費者に対する損害がモンサント、Forage Genetics、GMアルファルファ栽培者の経済的損害に比べて大きすぎると考えただけだと判決した。 食品安全センターのアンドリュー・キンブレル常務理事によると、この判決は米国におけるバイテク作物規制の転換点をなす。シュレーダー判事の決定は、USDAが完全な環境影響評価書なしでGMアルファルファを承認することで米国環境法を侵犯したことを確認する。また、USDAが、GMアルファルファの商業栽培に続いて起こり得るラウンドアップ抵抗性スーパー雑草の問題への取り組みを怠ったことも確認するものだと言う。