2008年11月2日日曜日

遺伝子組換え作物の現状と問題点⑥

● 技術上の問題点

遺伝子組換え技術によって生物の種の壁は事実上無くなった。今では細菌、植物、動物(人間も含む)の遺伝子をお互いに入れ替えることが可能になった。しかし、遺伝子の交換可能性を基礎にした商業栽培のメリットという既成事実が優先し、宿主の遺伝子に与える外来遺伝子の影響については殆ど分かっていないのも事実である。

第一の問題点は、外来遺伝子を作物(宿主)の遺伝子に挿入する際、挿入場所の予測が不可能なことである。挿入はランダムである。このことが遺伝子組み換えや遺伝子治療の最も基本的困難でかつ未解決の問題である。

これは、遺伝子の標的問題といわれる。宿主染色体の中の正確な標的に外来遺伝子を送り込むことが出来なければ、宿主遺伝子への様々な影響を排除することは出来ない。数千の組み換え体細胞の中から、宿主親株と出来るだけ似ているものを選び出すことが今でも組み換え体作出の大きな手間であり、これは従来の交配による品種改良と変わらない。

第二は組み換え体と非組み換え体の選別が必要なことである。そのため選択マーカー遺伝子と呼ばれる抗生物質耐性遺伝子や除草剤耐性遺伝子を目的遺伝子に連結し、細胞が抗生物質耐性や除草剤耐性になったか否かで組換えの成否を判別する。従って、除草剤耐性以外のGM作物は目的の遺伝子と同時に抗生物質耐性遺伝子を持つ。抗生物質耐性菌発生などの危険性は上に述べたとおりである。


DNA

● 進化や生態系への影響

遺伝子汚染はなぜ問題か。理由は外来遺伝子の構造にある。外来遺伝子は異種生物の遺伝子である。種の壁を無視した異種生物の遺伝子の挿入の長期的影響はどうであろうか。

また、外来遺伝子を単独で作物に挿入しても機能しない。細菌と高等動植物とは遺伝子のスイッチ(プロモーター)や遺伝暗号の終わりを示すターミネーター構造が異なるからである。それで除草剤耐性の場合、プロモーターにはカリフラワーの病原ウイルスの遺伝子、ターミネーターには植物に腫瘍を作る細菌の遺伝子断片などを使う。その他、除草剤耐性タンパク質を葉緑体に運ぶためペチュニアの遺伝子の一部も使う。


ペチュニア

このように、目的の形質を発現させるために、本来、植物の進化の過程ではあり得なかった生物やウイルスの遺伝子をモザイク状に連結しそれを宿主に入れる。
これが遺伝子汚染によって近縁の野生植物に伝播した場合の生態系や進化に与える影響はその評価方法すらまだない。

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